フジ外見格差コメディはナイスキャスティング!「人は見た目が100パーセント」(TVふうーん録)

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 昔、女性誌の仕事をしていた頃、見た目で判断されてガン無視された経験がある。とある有名ファッションブランドの広報の女に。センスが悪い私はどうやら彼女の視界には入らなかったようだ。というか目も合わせてもらえなかった。話しかけてもあからさまに無視し、私の先輩とだけ話す。今思うと、私の至らなさも多分にあったとは思うが。わかりやすい人だったなぁ。

 そんな苦い思い出が蘇った。「人は見た目が100パーセント」を観ていて。

 ファッションセンスも女子力もない理系女が、職場ごとまるっと化粧品会社に吸収され、外見を磨く研究に奮闘するという物語。八王子のもっさい研究所からオシャレな丸の内勤務になり、ビビりながらも髪やメイク、服装からバッグ、アクセサリーまで「どう見せるか」を研究していく。当然、痛々しい大失敗も経験。

 主演は桐谷美玲。地味でダサくてやせっぽちの貧乳で、自分を卑下しまくり。コミュニケーション能力にやや難もあり、友達もおらず、家ではロボットが話し相手という女性だ。いい。桐谷美玲を初めていいと思った。キラキラ女子より地味女子がしっくり。当たり役でハマリ役だと思う。

 同じく奮闘するのが、水川あさみ。唯一の既婚者で子持ちの設定。元ヤンではなく元コギャル。昭和の残滓(ざんし)ね。着やすさと快適さを優先し、無難な服装が多い。綿100%かな。でもその気持ち、すごくよくわかる。

(C)吉田潮

 そしてもうひとりは、つぶやきシロー似のブルゾンちえみ。ビビッドな色使いの服で案外オシャレ。ドラマ初出演とは思えないほど馴染んでいる。フジ、久々のナイスキャスティング!

 この3人が仕事そっちのけで、外見向上の研究に勤(いそ)しむのだが、あまりに流行や常識とかけ離れているため苦戦を強いられる。新しい職場のマネージャー(室井滋)はダサい3人を目の敵にするが、直属の上司である鈴木浩介は何かと助けてくれる。手厳しく、時には優しくオシャレ指南。オネエキャラの鈴木が登場するシーン、おそらくアドリブで暴走。絵ヅラも漫画の一コマのようで実に面白い。

 外見向上研究に徹する原作漫画にはない設定や要素を加えて、コメディとしての純度を高めることに成功。ドラマというよりは、コクのある実用バラエティ要素が強く、苦手な人も多いかもしれないが、私は想定外に楽しんでいる。流行のアイテムでことごとく失敗する3人が笑えるし、共感しきり。トイレでバッグを咥(くわ)えたこともあるし、素敵な服を洗濯して半分のサイズに縮ませたこともある。

 しかしながら、外見をオシャレにすれば何もかもがうまくいく、とは描いていない。外見磨きに現(うつつ)を抜かす間抜けさを、ほんのり嘲笑する内容にも胸がすく。

 ところどころに、古い演出(女性ホルモン低下という脅しなど)も垣間見えるが、ひとまずは許容範囲。なんか、ものすご~く久しぶりにフジテレビ制作の作品を褒めている。数えてみたら「ラブラブエイリアン」以来で7カ月ぶりだったわ。次は1年後かな。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2017年5月25日号掲載

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