又吉直樹、綾部のNY挑戦に「僕よりスケールがでかい」 新作「劇場」発売発表で

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新作『劇場』を手にピース

 5月11日、作家・又吉直樹の2作目『劇場』が刊行され、都内でお渡し会が行われた。芥川賞を受賞した『火花』が300万部越えの大ヒットとなり、華々しい作家デビューを飾った又吉。単行本の刊行に先んじて作品が掲載された『新潮』4月号は、文芸誌としては異例の4万部を突破した。単行本初版は30万部と、改めて作家・又吉直樹の2作目ヘの期待値の高さが伺われる。

 単行本発売日となった11日にはお渡し会が開かれた。会場となった銀座の博品館劇場に現れた又吉は、お渡し会前に行われた記者会見で「『劇場』も多くの人に手に取ってもらいたい」と熱い想いを語り、撮影ではピースサインを見せるなど終始リラックスした様子だった。

 会見で記者から、2作目が発売されて相方の綾部とますます格差が広がるのでは、という質問が飛ぶと、「相方ニューヨークに行ってますから、僕よりスケールがでかい。僕こそ、綾部氏に期待していますね」と笑顔をみせ「(綾部は)本格的に今月、来月には拠点を移すことになりますね」と近況を明かした。さらに綾部から『劇場』の感想は貰ったかという質問には「あいつは映画はすごく好きなんですけど、小説は苦手で。一ヶ月くらい前に『無理せんでええで』と伝えたら『読まなきゃな』って強い意志を感じる目で言ってたんですけど、まだ感想はきてないですね」と暴露した。そして「感想は楽しみですけど、『火花』の感想もまだ正確なものは聞いてない。『火花』は『長かった』って言ってましたけど、今回は『火花』より長いのでなんて言われるでしょうね(笑)」と笑いを誘った。

■デートで一緒に小説を読みたい

『劇場』のテーマは「恋愛」。これまで恋愛のイメージがなかった又吉だけに、どのような作品となるのか発表前から期待が寄せられていた。しかし又吉自身は「恋愛小説は、恋愛がうまい人だけが書くものではない」「恋愛がわからないからこそ、恋愛が書きたかった」と語る。
 自身の話がベースになっているのかという質問には「これには結構神経を使って回答しないといけない」と苦笑しながら「僕の話ですと言ったら噓になるけど、経験や見て来たものは入ってる。全く知らないものでもないし、(主人公は)僕でもあるし僕でもないし、という曖昧な答え」と言葉を濁した。

 また、どんなデートがしたいかという質問には「あんまり人が多いところいってもあれだし、一緒に小説を読んだり、一緒に歩いて散歩したり、というのがよいですかね」と回答。恋愛がテーマの今作だが、執筆中に恋愛はしていなかったという。

『劇場』は、不器用な主人公・永田がヒロイン・沙希と出会い感情をぶつけ合う様子が描かれる。周囲の人間と傷つけ合ったり、情熱をぶつけ合ったり、挫折したり、苦悩したり、愛したり――。恋愛だけでなく、まさに私たちが日々感じている心の動きと、それに伴う自分でもコントロールできないような行動が丁寧に描かれており、どこかで自身の人生とシンクロする。読者の胸を打つ真摯な作品となっている。

 賞や映像化は意識していないということだが「賞を穫ればたくさんの人に読んでもらえるというのは僕が一番わかっているので、デイリースポーツ賞、是非ご検討ください」と賞について質問した媒体にジョークで切り返す一面も。すでに読んだ人たちからは「登場人物にマジで怒ってる人がいたり、自分のことみたいだったという人がいたり、登場人物の誰かに対して愛情があってあの人には絶対幸せになってほしいといってくれた」との感想が寄せられていると明かし、「作品の中に入り込んで楽しんでくれたんだなという感想があるので、嬉しいです」と自信をみなぎらせた。

 いよいよ劇場の幕が切って落とされた。読書ばなれが叫ばれる昨今だが、彗星のごとく現れた作家・又吉直樹の勢いはまだまだ続く。

デイリー新潮編集部

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