真如苑の懐を潤した「霊能者」家元制度

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多額の会費

 信者数や社会的影響力はともかく、財力の面で創価学会に匹敵すると言われるのが、真如苑である。彼らの懐を潤す特異な“霊能のシステム”とは――。

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 真如苑は、昭和11年に伊藤真乗を開祖として始まった密教系の新宗教。戦後10万人程度だった公称信者数が昭和50年には約30万人、60年には約180万人、そして翌年には200万人を突破。当時のマスコミから〈創価学会からの乗り換え続出〉〈急成長教団〉などと注目された。

 その頃、教団の年間収入は100億円以上と報じられ、東京・青梅市内の山林16万坪を買収したことで、物議を醸したこともあった。その後も、武蔵村山市の日産村山工場跡地を約740億円で、千代田区のダイヤモンドホテル跡地を約80億円で購入したほか、ニューヨークのオークションで運慶作と言われる仏像を約14億円で落札するなど、やたらと羽振りがいい。衰亡の道を辿り始めた他の新宗教とどこが異なったのか。

 大正大学教授(宗教社会学)の弓山達也氏は、真如苑が成功した最大の理由は、「霊能のシステム」にあると言う。

 真如苑では、教団施設内で指導者から宗教的なアドバイスを受ける「接心」が、重要な基本的修行とされている。悩み事に対するアドバイスも得られるもので、これが女性信者の人気を集めていると言われる。接心を行う指導者は「霊能者」と呼ばれ、修行を積み霊位を上げることで誰でもそれに就けるのが、この教団の特徴だ。いわば習い事の家元制度のようなもの。教団によると、所属する霊能者の数は約5200人。

「霊能者の認定は常に教団本部が直接管理しており、霊能者であっても教団の定めた場所でなければ霊能が発動しない。さらに、信者が接心を受ける霊能者は信者を教団に導いてくれた“筋親”とは別系統で、担当も変わります。そのため、霊能者の暴走や大規模分派が起こりにくいシステム。これによって、大きな失敗をせずにきたことが、教団が成功している理由でしょう」(弓山氏)

 信者が支払うカネは、月会費200円。月1回程度受ける接心のうち、例えば「向上接心」は1000円。個別の料金設定は特に高額ではない。

 実際の信者数は100万人弱と推定されている。1年に1万2000円程を払う信者がそれだけいれば120億円。むろん、この他に金額が定められていない布施がある。実際、比較的収入の高い信者が多く、女優の沢口靖子をはじめ、芸能人信者も少なくない。カルト宗教の被害者からの相談を多く受けている都内の僧侶が言う。

「信者には会社経営者のほか、茶道、華道、ピアノなどの習い事の先生が多いようで、その手の信者はかなり高額な布施をしているケースがあるようです。うちにくる相談は、この手の人々から地位を利用した強引な勧誘活動を受けたというパターンです。同族企業の経営者が息子に“お前の嫁を入信させなければ会社を継がせない”と迫って離婚に追い込んだり、習い事の先生をしている信者が生徒に“真如苑に入信しなければ免状を与えない”と入信を迫るケースもある」

 教団は、勧誘方法について、こうコメントする。

「強引な勧誘は禁じています。入信を拒んだ方への報復措置は明らかに間違っており、何か方法があるのであれば、当該信者に対して注意や改善を促したい」

 創価学会ほど目立つことなく、事件や社会問題にならないレベルでの巧妙な信者や布施の獲得手法が、真如苑の躍進を支えてきたのだ。

特集「雨後の筍『新興宗教』裏面史」より

週刊新潮 3000号記念別冊「黄金の昭和」探訪掲載

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