明日「北朝鮮」軍創設85周年、金正恩の示威行為は ICBMが最終段階

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■試射は年内

 実際、

「あのミサイル失敗は、実は北が打ち上げておいて、わざと破壊したのではないか、という説も出ています」

 と言うのは、拓殖大学海外事情研究所の川上高司所長である。

「発射すれば金正恩もアメリカに怯まなかったということでメンツが保てる一方、失敗という形にしておけば、アメリカに先制攻撃をする材料も与えずに済む。この時点ではプラスマイナスゼロで終わるのです」

 つまり、緊張は残ったまま、衝突はしないという現状を保つがための、ひとつの高等戦術だったのではないか、という見方も成り立つのである。

 コリア・レポート編集長の辺真一氏は言う。

「北朝鮮の一番の目的は、宿敵であるアメリカに到達するICBM(大陸間弾道ミサイル)を手にすることです」

 現在、北朝鮮は、スカッド、ノドン、テポドン1、ムスダンなどの弾道ミサイルの開発に成功している。しかし、射程距離はムスダンの4000キロが最長。グアム島までが精一杯だ。

 ワシントンに届く距離1万キロ超えのICBMには、テポドン2の改良型がある。もっともこれは開発中で、発射台は固定式であるために、弾を込めたとしても見つかって事前に爆破されやすく、燃料も注入に時間がかかる液体型と言われている。

 一方、同じく開発中のKN08、KN14といったICBMは、発射台が移動式で捕捉しにくい“厄介もの”だ。

 辺氏は言う。

「北朝鮮は既に核を保有しています。ICBMについても、この正月に“準備は最終段階”と宣言しており、年内に試射が行われる可能性は高いでしょう。これさえ完成すれば、核弾頭を搭載し、アメリカ本土に核を撃ち込むことができます。実際、15日の軍事パレードで展示していた7つの弾道ミサイルのうち、3つは移動式のICBMと見られます。つまり、アメリカに対し、いよいよ本土への核攻撃が可能だと、無言の圧力をかけたに等しいのです

 金正恩が、イラクのフセイン、リビアのカダフィの2人を反面教師としているのは知られた話だ。曰く、彼らは圧力に屈し、核を持つことを放棄した。だからアメリカに潰された。それゆえ、自らはその轍を踏まないよう、核開発を続ける。そして、それを米本土まで撃ち込む能力を持てば、アメリカとの2国間交渉に持ち込め、体制維持が図れる、との目論見なのである。

 それに対し、アメリカはどんな手を取るのか。

 先の川上所長は言う。

「まずは中国に対し、“北を何とかしろ”と圧力を強めるでしょう。具体的には、北に引いている石油のパイプラインを止めることを要求するのではないでしょうか。そうなれば、石油の9割を中国に負う北朝鮮は崩壊する。それを材料として、北に核やICBMの開発を止めさせるのです。問題は、中国が積極的にこれに関わろうとしない場合。その場合は、秋の党大会までは習近平の顔を立てて行動に出ないでしょうが、その後は単独で軍事作戦に出てもおかしくはありません」

 他方、もっと直接的な道を辿るのではないか、と予想するのは軍事ジャーナリストの世良光弘氏。

「アメリカはとにかく核ミサイルが本土まで飛んでくることを恐れています。ICBMが試射される前に、脅威の芽を摘みたいはず。北の核実験はもちろん、中距離ミサイルの発射、着弾というレベルでも、これ幸いと先制攻撃に出る可能性も否定できません」

 その最短のシナリオが、4月25日だという。

「この日、北朝鮮は、軍の創設85周年を迎えます。そもそも、軍事パレードはこの日に行われるはずでしたし、北がここで何も示威行為をしないとは考えにくい。しかも、新月を迎え、アメリカにとっては、闇にまぎれて攻撃するちょうど良いタイミングなのです」(同)

 核とミサイルを巡り、米朝が四半世紀に亘って繰り広げてきた「チキンレース」。その終末がようやく見えようとしている。

特集「『金正恩』ミサイル失敗は偽装で『ICBM』が最終段階」より

週刊新潮 2017年4月27日号掲載

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