著名人たちも声を揃える、「介護殺人」を招く「在宅介護」の問題点

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■政府方針と乖離する「現場」の声

 これまで、昨年11月に小社が出版し、冒頭の女性も登場することで反響を呼んだ『介護殺人─追いつめられた家族の告白』(毎日新聞大阪社会部取材班著)に対する、著名人5人の「共感」の証言を紹介した。介護体験を持つ彼らが異口同音に語ったのは、愛するがゆえに身内の介護対象者を手にかける行為を、決して他人事(ひとごと)とは思えないというものだった。超高齢社会の日本で「日常化」し、厚生労働省も防止対策に着手し始めた介護殺人。現代の「日本病」とでも言うべきこの現象に関して、著名人たちがもうひとつ口を揃えたことがあった。それは、在宅介護の「限界」である。

 民主党政権下の2012年、政府は施設での介護よりも在宅介護に関する報酬を手厚くするなどして、「在宅シフト」を打ち出した。自民党が政権復帰して以降も、14年には厚労省が介護報酬改定の基本方針の中で「在宅介護の推進」を掲げ、また特別養護老人ホームの入所基準を要介護1以上から原則要介護3以上に引き上げる等々、「在宅介護圧力」を強めてきた。

 たしかに、「家族の世話は家族で」が基本であり、極力、人様に迷惑をかけないようにという考え方は、日本人の美徳のひとつと言えよう。しかし、介護を体験した「現場」の声は、政府の方針と乖離していた。

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