小池都知事に突き刺さる“ブーメラン発言” 豊洲「ベンゼン79倍」結果で

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■過去の調査手法との違い

 まず、調査には豊洲新市場内の201カ所に埋められた、直径5センチのパイプ状の「井戸」が用いられる。井戸には無数の穴があいており、土壌から滲み出した地下水が溜まっていく。その地下水を汲み上げて有害物質の濃度を調べるわけだ。

 ただ、調査前から溜まっていた水には雨水なども混じっているので取り除く必要がある。この排水作業を「パージ」と呼ぶ。1~8回目の調査では、パージの翌日以降に、井戸に溜まった純粋な地下水を分析対象としてきた。

 だが、「9回目」の業者の証言は、そうした大前提を覆す内容だった。概説すると、

1.パージ(排水)から20~30分後に井戸から採った地下水を分析するよう、都の「新市場整備部」の担当者から指示された。

2.同じく都からの指示で、1カ所の井戸ではパージした水をそのまま分析に回している。

3.初期の段階で異常に高い数値が出たことを報告したが、都は「1月上旬に文書で伝えるように」というだけで再調査の指示もなかった。

 素人目にも過去の調査手法との違いは歴然としている。槍玉に挙げられた格好の都は、「スピード感は重視したが、国のガイドラインからは逸脱していない」と反論。ちなみに「スピード感」は小池知事が好んで使うフレーズでもある。

 一方、京大大学院の米田稔教授(都市環境工学専攻)は都の弁明に首を傾げる。

「土壌汚染の水質調査において、パージした水をそのまま分析することは特別な場合を除いてはありません。また、東京都は再調査では1時間以上をおいて採水するという手順を公表しています。これらが守られたとしても採水条件が異なる場合は、過去の調査結果との単純な比較は困難となります」

 この点だけでも調査の信頼性を根底から揺るがす不祥事に他ならない。

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