保育園入園のための“アリバイ会社”も登場…椅子取りゲーム化する「保活」

社会週刊新潮 2017年3月2日号掲載

■芸能人も狂奔! 偽診断書からアリバイ会社利用まで「保活」の裏ワザ一挙公開(下)

昨年4月時点で待機児童は2万3553人(写真はイメージ)

 厚労省の昨年4月時点でのデータによれば、保育園に入れない待機児童は2万3553人。潜在的な待機児童は約6万7000人に上るという。こうした状況を背景に、今、認可保育園に子供を預けるための「保活」が熾烈を極めている。

 入園の可否は各自治体が定めるポイント制によって決まり、たとえばフルタイムで働く夫婦の場合には一人50点ずつで計100点が加算される。このポイントを稼ぐため、精神疾患の診断書の偽造や偽装離婚などを行う“裏ワザ”を使う者が出現しているというのだ

 もっと手の込んだ裏ワザもある。保活に詳しいライターが明かす。

「同居している祖父母が補完的な保育をできると認定された場合、減点対象となることがあります。そのため、定年している祖父母に書類上、仕事に就いてもらい減点を逃れるのです。形だけボランティア団体の役員になってもらったり、人材センターに登録させたり。働いていることにするのです」

■アリバイ会社

 最近、注目されているのは、アリバイ会社を利用するケースだという。

「アリバイ会社は、無職の人や風俗嬢、水商売といった勤務先を知られたくない人に代って、会社勤務を装い源泉徴収票や給与明細を発行するサービスを行っている。専業主婦などが、これらに依頼して就労証明書を偽造してもらうのです。共働きと認定されれば、入園の可能性が飛躍的に上がります」(同)

 実際、都内のアリバイ会社に聞くと、

「保育園関係でうちに来るお客さんからは、きちんとした会社で働いていることを示す書類で提出するために、必要な就労証明書の発行を依頼されることが多い。1件、数千円で、一般の会社に勤務している書類をお出しできます。多い日には1日で数十件。今の時期は、特にご依頼が多く、1月は100件を超えました」

 アリバイ会社は、単に就労証明書を発行するだけではない。

「こうして認可保育園に入っても、子どもが熱を出して具合が悪くなるとか、緊急事態が起きた際は、応募時に書類に記入した会社に連絡が行く。そういう連絡に対するアリバイ電話サービスも行っております。料金は1カ月5000円。1年契約なら3万円にディスカウントしております。就労証明書発行でうちの会社を利用して保育園に入れた方は、ほとんどがアリバイ電話サービスを利用しています」(同)

 ちなみに、このアリバイ会社は、広告で堂々と保育園対応を謳っているが、

「おかげで、順調に売り上げは伸びてますよ。それだけ待機児童の問題は深刻なのだと感じますね」(同)

 こんなことが罷り通っていいのか。

■椅子取りゲーム化

「偽装離婚してポイントを加算させる人がいるというのは聞いたことがあります。しかし、それでも入れなかった人もいます」

 と話すのは、保活に詳しい東京都市大学の猪熊弘子客員准教授である。

「私は自治体の動きも把握していますが、最近の行政はしつこく確認作業をやっています。そういった裏ワザには、待機児童が多い地域ほど目を光らせている印象です。生活保護と同じようなもので、自治体や保育園に匿名のタレ込みがあるケースも少なくない」

 猪熊氏に言わせれば、この1年、政府による抜本的な待機児童対策は行われていないという。

「そもそも待機児童が最も多いのは1歳児です。0歳保育を利用しなければ、1歳から保育園に入れることがほぼ不可能な今、『0歳の時期は一つ一つの成長を見守りたい』と育休をフルに使う人は、“保活負け組”のように見られています。妊娠中や産後間もない時期に何度も役所に足を運び、複数の保育園見学をしなければならないのが現状で、産休や育休という制度は、“保活休暇”にしかなっていません。黒に限りなく近い裏ワザに手を出すまでに保活が“椅子取りゲーム化”していることを、政府はもっと深刻に考えるべき。包括的に制度を変えていかなくては、待機児童の問題は解決しません」

 今のままなら、さらに厄介で複雑な裏ワザが増えるだけである。

特集「芸能人も狂奔! 偽診断書からアリバイ会社利用まで『保活』の裏ワザ一挙公開」より