「彼女にあるのは権勢欲だけ。それでは東京都知事は務まらない」石原慎太郎の反撃

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■百条委 上等!独占「石原慎太郎」インタビュー第2弾(下)

 ついに百条委員会が設置され、3月20日に証人として呼ばれると報じられる石原慎太郎氏(84)。「座して死を待つつもりはありません」「上等ですよ」と語る石原氏へのインタビュー後半である。

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石原慎太郎氏

 百条委では、「豊洲」の土地を東京ガスから購入した経緯について追及される見通しだが、

「まるで私が東京ガスと裏取引をしたかのような批判も耳にしますが、そんなことは断じてあり得ません。都庁は極めて民主的なプロセスを踏んで方針を決めている。独裁制などではありません。豊洲移転についても、専門家を集めた審議会で議論した上で“知事の裁可を仰ぐ”ことになった。都庁にはその議事録や答申も残されているはずなのでぜひ精査してもらいたいと思います」(石原氏)

 この「経緯」がブラックボックスだと非難されていることについては、石原都政スタート直後の99年6月に市場長に就き、東京ガスとの交渉に当たった大矢實氏も憤りを隠せない。

「正直なところ、いまの豊洲を巡る状況は残念の極みですよ。もちろん、犯人探しをするのも結構です。しかし、豊洲以外に候補地として挙がっていた晴海や有明は、新市場の要件とされた40ヘクタール以上の面積を有しておらず、すでに再開発も進んでいた。最終的に豊洲への移転を決定した判断に間違いはなかったと思います。それでも小池知事はこの問題に“真犯人”がいると考えているのでしょうか。ベンゼンの問題にしても十分に除去が可能ということで豊洲に決めたわけですから」

■過剰反応

 とはいえ、1月14日に発表された9回目の地下水モニタリング調査の結果が、豊洲移転問題の迷走に拍車をかけたことは間違いない。最大で環境基準値の79倍というベンゼンが検出されたことは都民に大きな衝撃を与えた。だが、京都大大学院の米田稔教授(都市環境工学専攻)の解説によれば、

「要因として考えられるのは昨年10月から本格稼働を始めた地下水管理システムです。地下水を吸い上げ、下水に排出するシステムが稼働したことで、これまで動きのなかった地下水が縦横に動いて掻き混ぜられ、汚染物質が溶け出しやすくなったのでしょう。ただ、数値が上がったなら、必要に応じて汚染物質が残留している土壌を掘削したり、地下水を集中的に吸い上げるといった対策を講じればよい。79倍という数字も一時的にはあり得る値。そもそも、豊洲の地下水は直接飲むわけでも、これで魚を洗うわけでもありません。厳しい基準を適用して過剰反応しているのです」

 また、豊洲市場は、実際に施設を使用しながら徐々に汚染物質を取り除く方針だったという。

「そのために地下水管理システムには浄化施設が備わっているのです。もし汚染物質を完全に除去するとなれば、それこそ砂利の一粒一粒まで調べる必要がある。そうではなく、一定の安全性が担保された時点で移転を決めるのが政治の役割でしょう」(同)

■都議選までに結論を出さない

 石原氏もこの見解に首肯する。

「地下水の再調査を進めるにしても、どういった結果が出たら移転を決めるのか、その基準とスケジュールを明らかにすべきです。また、豊洲移転を白紙撤回するのなら、6000億円を投じて完成した新市場をどうするのか、計画を早急に練り直す必要がある。不安を煽るだけ煽って問題を放置しては、とても“都民ファースト”とは呼べません」

 だが、現状では小池知事が迅速な移転に向けて舵を切るとは考えづらい。都政担当記者が続けるには、

「小池知事の当面の目標は、自らが率いる都民ファーストの会が都議選で“過半数”を占めることです。そのため、都議選までに豊洲問題の結論を出すつもりはない。もし選挙前に、移転に賛成の意向を示せば反対派の票が失われます。また、築地再整備を言い出せば、市場関係者を筆頭とした移転推進派を敵に回し、豊洲市場の巨額な整備費の問題が圧し掛かる」

 結局、「宙ぶらりん」の状態が続くことが彼女にとってベストの戦略となるのだ。

■決断こそ知事の役割

小池百合子都知事

 圧倒的な支持率を背景に、確固たる地位を築きつつある都庁の「女帝」。石原氏は最後にこう吼えた。

「私が都知事になった時には、これまで停滞していた事業が一気に進むようになるんじゃないか、という期待感が都庁内にあったと聞いている。ただ、残念ながら、小池知事が自らリーダーシップを発揮して、本当の“大改革”を成し遂げるとは到底、思えない。彼女にあるのは権勢欲だけですよ。それでは東京都知事は務まらない。“行政の長”に必要なのは決断です。たとえば、一部で囁かれているように豊洲移転の可否を住民投票にかけるなど以ての外。都民に決断を押し付けては、知事としての責任放棄です。賛成派と反対派が真っ二つに割れるような難題を前に、毅然とした態度で決断を下すことが、知事に課せられた役割なんだ。もちろん、そこには責任も伴う。知事時代の決断について百条委で責任を問われるならば、私は正々堂々と受けて立ちますよ。それにしても豊洲は、日本の最先端技術や専門家の意見を信じて、あきらめたりせず、有効に使うべきです」

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 百条委 上等!独占「石原慎太郎」インタビュー第2弾(上)はこちら

特集「『座して死を待つつもりはない!』独占インタビュー第2弾 百条委 上等! 手負いの『慎太郎』」より

週刊新潮 2017年3月2日号掲載

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