「研究対象を恋愛対象にしてしまいました……」 フィリピンパブ嬢と大学院生のあまりに不思議なラブストーリー

社会2017年2月24日掲載

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■ミイラ取りがミイラに

パブ嬢と付き合うようになった中島さんが見た「驚きの世界」とは―― ※写真はイメージ

 ミイラ取りがミイラになる。これは小説や映画の世界ではお馴染みの展開だろう。

 たぶらかすつもりで近づいたのに、いつの間にか相手の事が好きになって……というのは、「007」シリーズのお決まりのパターン。この場合、結構な確率で女性側は痛い目に遭うことになる。

 そこまで深刻な話ではないが、「研究対象」がいつの間にか「恋愛対象」になってしまう――そんな意表をつく展開を描いたのが、『フィリピンパブ嬢の社会学』(中島弘象)。珍しいのは、これが完全な実話だということだろう。

 2011年、著者の中島さんは、中部大学で国際関係学を学ぶ大学院生だった。彼の女性指導教官は、国際政治学が専門で、在日フィリピン人女性の生活についての研究、支援を行っていた。そこで、中島さんは、名古屋にあるフィリピンパブを修士論文のテーマにしようと考える。

 指導教官もこんな風に勧めてくれた。

「フィリピンパブについての学術調査は、これまで見たことがありません。面白い研究になるかもしれませんね」

 そこで中島さんは、名古屋市内の繁華街、栄にあるフィリピンパブに実態調査に出向く。そこでテーブルについたホステスの1人がミカさんだった。

 ミカさんが来日したのは2010年11月。一足先に日本のフィリピンパブに出稼ぎに来た姉から誘われてのことだった。

 身長は150センチ。出会った時の年齢は25歳と中島さんの3歳上。

 明るくてやさしいミカさんに対して、中島さんは「商売抜きで親切にしてくれる」と感じるようになる。そして、何回か店に通ううちに、2人は「つきあう」ようになった。

■周囲は猛反対

 ここで多くの方が、「いや、それ騙されているよ!」とツッコミを入れることであろう。

 そうしたツッコミを待つまでもなく、中島さんの周囲は猛反対した。

 指導教官は、

「そんな危ないこと、すぐやめなさい! そんなことを研究対象にはできません。その女性とは早く別れなさい。あなたのお母さんに顔向けできません!」

 と血相を変えた。

 元ホステスのフィリピン人女性もこう言った。

「ああいう子たちは、好きよとか、愛しているとかいうよ。でもそれは口先だけ。本当はお金のことしか考えていない。付き合ってるのが分かったら、(彼女の雇い主の)ヤクザに何をされるかわからない。早く別れたほうがいい」

 もちろん母親も激怒して、「(彼女とは)絶対に会いません」と宣言する。

 こんな逆風にもめげずに、中島さんは彼女との付き合いを続けた。

 結果として、日本で働くフィリピンパブ嬢の実態、ヤクザとの関係もより深くわかるようになっていく。最終的には、彼女の「足抜け」を巡って、怖い人と対峙する事態に――。

 幸い、現在も2人は幸せに暮らしている。これまでのところ、一家の主収入はミカさんによるものなので、「お金めあて」という心配は杞憂に終わっているようだ。

 中島さんはこの貴重な経験をもとに、同書を書くほかに、フィリピン人出稼ぎ女性と日本人男性との間に生まれた子どもを支援する比NGO「DAWN」と連携して活動を行っている。