朝日女性記者がスクープした「原発いじめ」記事の悪評

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 原発事故で避難している横浜市の中学生が、いじめに遭っていたことが発覚したのは昨年11月。言語道断の話だが、“反原発”を社論とする朝日新聞は、その後も熱心にこの類の話を報じている。ところが、12月13日の夕刊で女性記者がスクープした「原発いじめ」の記事は、悪評ふんぷんなのだ。

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反原発なら何でも記事になる?(東京本社)

 件(くだん)の記事のタイトルは、〈中学でおごり要求〉。東京・千代田区の区立中学で福島から自主避難している生徒が、同学年の3人にいじめられていたというものだ。記事をざっと要約すると──。

 まず、11月下旬、母親が子どもの鞄に大量のごみを発見。いじめに気付き、学校に申告した。一昨年夏頃から「避難者」と呼ばれ、「避難者とバラすぞ」と脅された。結果、3人の生徒にお菓子など約1万円分をおごらされ、教科書やノートもなくなったという。

 もっとも、学校や千代田区教育委員会は、この記事に困惑するばかりだ。被害者とされる生徒を仮にAさんとする。同区教委の担当者が言う。

「Aさんの保護者から学校に相談があったのは11月21日。そこで、Aさん及び関係しているとされる15人の生徒に聞き取りを行った。結果、Aさんが約1万円をおごったのは事実でした。ただ、Aさんと他の生徒の間で証言には大きな食い違いがあって、一方的にAさんがおごったというより、“おごりおごられの関係”だったと判断されました」

 原発避難者であることを理由に誹謗中傷されたとの点も、15人全員が否定。教科書に関しては、Aさんの記憶が曖昧でいつどこでなくなったかがはっきりせず、調査できなかったという。

「これ以上調査を行うと、Aさんが原発避難者であるのを広めることにもなりかねず、逆効果と考えた。Aさんも学校が、皆が仲良くできる環境を作ってくれればそれで良いと言っていた。そこで、保護者も納得の上、11月末で調査を終了。ところが、12月13日に件の記事が掲載されたのです」(同)

■仲良くやっています

 女性記者は、筋金入りの反原発記者として知られる。彼女は12月に学校と区教委を取材したが、学校関係者は、

「学校側は、おごりおごられという関係の中で、Aさんが1万円おごったこと、あとは調査中と答えたそうです。すると彼女は強い口調で“これは文科省の定義ではいじめですよね”と高圧的な態度で何度も迫った。朝日の記事には、保護者が子どもの鞄にごみを発見しいじめに気付いた、とある。ですが、保護者はこちらの聞き取りに、自分の財布からお金が抜き取られていることに気付き、子どもを問いつめ、いじめられていることが分かったと説明しています。この点の確認取材も一切、ありません」

 12月16日、母親の代理人が区教委を訪れた際も、

「記事を書いた記者が同行。許可もなく庁舎内で動画を撮影していた。取材手法に問題ありです」(同)

 これでは、反原発の朝日の記者が、充分な裏付けを取らず、強引に記事を書いたと言われても仕方あるまい。

 朝日新聞広報部に聞くと、

「ご質問の前提となっている事実関係が大きく異なりますので、ご確認ください」

 と答え、問題なしとの認識。朝日の報道を受け、区教委は、この件を第三者委員会で調査中だ。とはいえ、

「Aさんと、名指しされた3人の生徒は今も仲良くやっています」(先の関係者)

 朝日の記事が、子どもたちの仲を引き裂かなかったことが唯一の救いである。

ワイド特集「秘せずは花なるべからず」より

週刊新潮 2017年1月26日号掲載

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