「トランプ大統領」誕生の陰で…FBIとCIAのいがみ合い

国際週刊新潮 2017年1月26日号掲載

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 インテリジェンス(情報)が国家の根幹をなすのは言を俟(ま)たない。各組織が協調し、対話を有利に進めるのは外交の要諦であろう。が、米国で双璧をなす機関が、あろうことか新大統領誕生の陰でいがみ合いの只中にあるというのだ。

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諜報合戦(写真はFBI本部)

 他ならぬFBI(連邦捜査局)とCIA(中央情報局)の話である。ヒラリー・クリントンの私的メール問題に関し、FBIが調査再開を公表したのは10月下旬のことだった。

「これでオバマ=ヒラリー陣営と袂を分かち、FBIは完全にトランプの軍門に降(くだ)った格好となりました」

 とは、さる米国政治ウオッチャー。上智大学の前嶋和弘教授も、

「コミー長官は、再調査の公表直前まで民主党に内緒にしていたため、非公式協議で民主議員から激しく罵られたとも報じられました」

 その一方で、

「すでにトランプはCIAの再編成を明言している。これは、ロシアの大統領選介入問題を公表したことへの報復とも言えます」(同)

 が、先のウオッチャーは、

「トップの首がすげ替っても、CIA職員はトランプへの反発を抱えたままです」

 というのだ。こうした状況下、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏は、

「2つの組織間では、確実に“内戦”が起きています」

 そう指摘する。

「自国の情報が外国にハッキングされるなどの事態に際し、機密の外部流出を防ぐ『カウンターインテリジェンス』を担うのは、米国ではFBI。ところが、今回は全く姿が見えてこない。非常に不自然です」

 ネットメディア「バズフィード」が公開した件の文書は、体裁からして“聞き込み情報”によるものだといい、

「情報のレベルについて精査がなされないまま、あたかも最高レベルであるかのように公開されている。明らかな情報操作です」

 その主体はCIAであり、

「目的は弾劾裁判などではなく、オバマ政権の最後っ屁として『トランプはロシアのおかげで当選できた』との印象を植えつけるのが狙い。先日のオバマによるロシア外交官35人“追放劇”の後に、トランプ政権で大統領補佐官になるマイケル・フリンがロシア大使と頻繁に電話していたとリークされたのも、一連の流れです。基本的に共和党には対ロ強硬派が多い。ロシア問題で党内にくさびを打ち込み、来年秋の中間選挙に悪影響を与えようという目論見だと思います」

 遠大な“内戦”である。

特集「嵐の中へ船出した超大国『トランプ大統領』という魔人の急所」より