日光東照宮、宮司の「私物化」問題が紛糾 創建400年の節目に

社会 週刊新潮 2016年12月29日・2017年1月5日新年特大号掲載

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 天下は一人の天下に非ず、天下は天下の天下なり――。幼少期から苦労を重ね、太平の世を築いた家康公らしい遺訓である。一方、そんな徳川初代将軍を祀った日光東照宮では、2017年に創建400年の節目を迎えるなか、宮司の「私物化」問題が紛糾しているのだ。

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 これまで「言わざる」で通してきたお膝元の人々も、声を上げざるを得なくなったという。

グッズの数々

「我々は宮司が東照宮の“私物化”をやめ、共通拝観券を復活させることを求めています」

 そう語るのは、12月15日に記者会見を開いた「日光二社一寺の諸問題を考える会」の発起人代表・阿原一良氏だ。実は、日光市議会議員28人のうち過半数の15人までもが、この会に賛同している。

 彼らが批判の矛先を向けるのは稲葉久雄宮司(76)。1990年にその座へと就いた氏は、四半世紀に亘って東照宮のトップに君臨してきた。

 ちなみに、「二社一寺」とは日光山内にある東照宮と二荒山神社、そして輪王寺を指し、99年にユネスコによって世界遺産登録されたことでも知られる。「考える会」の賛同者で、日光市議の三好國章氏が二社一寺の問題を解説する。

「これまで東照宮・輪王寺・二荒山神社は1000円の共通拝観券を発行し、5:4:1の割合で収益を配分してきました。しかし、2013年に東照宮が離脱を表明し、この共通券の販売が中止された。東照宮は現在、共通券よりも高い1300円で単独拝観券を販売しています。観光客のほとんどが参拝する東照宮は儲かるのでしょうが……」

 これに頭を抱えたのが、財源を共通券に依存していた輪王寺だったという。

 地元の記者によれば、

「3年間で拝観者数は3分の1に減ったとされ、このままでは国宝や重要文化財の修復にも差し支えます。ただ、東照宮と輪王寺はかつて“鳴き竜”で有名な本地堂など、7つの建造物の所有権を巡って最高裁まで争っている。稲葉宮司はその件を持ち出し、共通券復活に向けた話し合いも進んでいません」

■エコバッグに葵のご紋

 外国人観光客の増加もあって、2015年の東照宮の参拝客は5年ぶりに180万人を突破した。だが、「儲かっているのは東照宮だけ」と嘆息するのは門前町の飲食店主も同じだ。

「稲葉さんが宮司になってから、門前は寂れる一方で、2割近くが店をたたんでしまった。とにかく街に客が流れて来ないんだ。最近になって宝物館にカフェまでオープンしている。大事な団体客も東照宮のなかで食事を済ませ、土産物も買ってしまうので、地元は干上がっています」

 実際に東照宮の売店に並ぶのは、400年式年大祭を記念した5000円のネクタイをはじめ、「葵のご紋」が刻まれた夫婦箸に金杯、エコバッグまで。

「地元のゴルフ用品メーカーとの共同開発で、“流鏑馬(やぶさめ)”なるゴルフボールまで作っていた。東照宮のブランドを使ってやりたい放題。地元では多くの人たちが“早く宮司が代わってほしい”と考えています」(同)

 私物化批判について、当の稲葉宮司を直撃すると、

「記者会見したかどうか知らないけど、いちいち話す必要なんかない!」

 と捲し立てるばかり。

 その後も再三、依頼したが期限内に回答は得られなかった。

 冒頭の家康公の言葉を借りれば、天下は東照宮だけの天下に非ず、である。

ワイド特集「夜明けの鶏(チキン)レース」より