相手を待たせた時にどう言うか プライドをくすぐる「殺し文句」とは

ビジネス2016年12月28日掲載

 ロシアのプーチン大統領が、安倍総理大臣との首脳会談に3時間も遅刻したことが大きな話題になりました。遅刻の常習犯だから……というのは、「日本だけがナメられているわけではない」と納得する材料にはなっても、「だから許される」という話ではないように思えます。普通の人間関係でいえば、3時間の遅刻は平謝りに謝っても許してもらえない可能性があります。恋愛関係ならば別れのきっかけにもなりかねませんし、ビジネスの場面ならば交渉決裂につながりかねません。

 相手を待たせた時にどう言うか。これは誰もが一度はぶつかる身近な問題でしょう。

 古今の有名人の「殺し文句」を分析した『ザ・殺し文句』(川上徹也・著)には、大正時代の総理大臣、原敬のこんなエピソードが紹介されています。総理になった原の元には、毎朝数十人もの陳情客が来ていました。順番に面会していくのですが、朝一番の客には必ず次のように語ったといいます。

「君の話は、いの一番に聞かねばならんと思ってね」

 そして、最後まで待たせた客には次のように語りました。

「君の話はゆっくり聞かなければならないと思って、最後までお待ちいただきました」

 ほんとうは客の方も、原が来た順に会っていることはわかっていました。それでも総理大臣にこのように言ってもらえたら悪い気はしません。

 このように、自分を特別で重要だと思わせることで、原敬の人気は高かったといいます。

『ザ・殺し文句』の著者である川上さんが見出した「殺し文句の法則10カ条」のうちの1つが「プライドをくすぐる」。原の言葉は、この法則にあてはまると考えられる、と川上さんは解説しています。

 同様の法則にあてはまる「殺し文句」として、同書では田中角栄の次の言葉も紹介しています。大蔵大臣になったばかりの田中は、新人官僚に向かってこう言いました。

「今日から、大臣室の扉は常に開けておくから、我と思わん者は誰でも訪ねてきてくれ」

 大臣である田中の「いつでも部屋に訪ねてきてくれ」という言葉が、新人官僚たちのプライドをくすぐったのは想像に難くありません。もちろん、こうした気遣いは、平民宰相と呼ばれた原や、同じくたたき上げの田中ならではのもの。

「ごめん!遅れて」といった謝罪の一言も無いプーチン大統領にそんなものを期待するのは、ないものねだりというものなのでしょう。

デイリー新潮編集部