コンビニATMから18億円出金事件 “出し子”へのマニュアルが存在

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 全国17都府県のコンビニATM約1400台から総額18億円が不正に引き出された――今年5月に起きた事件をご記憶の方も多いだろう。その周到なる“悪のマニュアル”の存在が明らかになった。

 ***

不正に引き出すための“悪のマニュアル”が存在した(写真はイメージ)

「実行したのは、住吉会系と山健系、さらに非暴力団系のオレオレ詐欺グループなど。事件の数日前に各グループの元締めが出し子(ATMの引き出し役)を緊急募集したのです」

 と捜査関係者が明かす。

 標的になったのは、南アフリカにあるスタンダード銀行が発行したクレジットカード。その情報が何者かに盗まれ、それを基に偽造カードが作成されたのだった。

「出し子たちが指定された場所に集まると、そこに指示役がいて、磁気テープが貼ってある白無地のカードが配られたのです」

 と語るのは、さるグループに近い情報通氏である。

配り終えた指示役は手元のマニュアルを、配らずに読み上げたという。曰く、

〈狙うのはコンビニATMのみ〉

〈暗証番号は1122〉

〈1回の引き出しは10万円。20回連続で引き出したところでロックが掛かるので、次の引き出しまでに1時間空ける〉

“まず言語を選択する画面が現れるので、そこで「日本語」を選択し……”などとATMの操作手順も丁寧に説明された。そして、

「出し子たちはセブン-イレブンなどコンビニをぐるぐる回って金を引き出し、カードと一緒に渡された紙に金額を書いていく。再び集まると、指示役が紙を回収し照合作業を行った。15%が出し子の報酬で、5%が指示役の取り分。なかにはトンズラした者もいたようですが」(同)

■六本木から南アへ

 これまでの捜査で約130人の出し子が窃盗容疑などで逮捕されているが、ここにきて、ある“重要参考人”の素性が浮かび上がった。

「国際指名手配され南アフリカに潜伏している松井知行(45)と紙谷惣(42)です」

 とは先の捜査関係者。

「六本木で有名な不良遊び人だった松井は、もともとカードのスキミングに詳しく、暴力団とも交流がありました。遡ること13年、あるクラブ店主が顧客情報を持ち出して店とトラブルになり、松井はそれを解決してやった。そこで、その店主に、見返りとして、新たな店でスキミングに協力するよう強要。それを嫌った店主が恋人と共に福島に逃亡すると、激怒した松井は彼らを拉致監禁。店主の首を絞めるよう恋人に命じ、彼女と共に集団で店主を殺害。その遺体をバラバラにして奥多摩の山中に遺棄したのです」

 筆舌に尽くしがたい極悪ぶりである。

 歌舞伎町で起きた別のリンチ殺人にも関与している彼らは、その後、その恋人を連れ、南アフリカに逃亡。死刑廃止国である同国は、死刑制度のある国に容疑者の身柄を引き渡さない国として知られている。

「彼らは南アで、暴力団から送られてくる盗難ベンツを売りさばいて逃亡資金にしているとのこと。2010年には、架空の旅行代理店によるサッカーW杯ツアーを騙り、被害総額1億円の詐欺事件も起こしています。スキミングに聡(さと)く、暴力団との繋がりも深い。そしてなにより南アに潜伏しているということは……」(同)

 警視庁は大使館を通じて松井らの身柄引き渡しを要請しているが、南アはそれを拒否し続けているという。

ワイド特集「年忘れの備忘録」より

週刊新潮 2016年12月22日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。