「天皇陛下」お誕生日会見、生前退位への言及は 「“摂政は感心しない”と仰っていた」ご学友語る

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ご学友が明かす陛下との電話

表された。

 加えて、官邸が神経を尖らせているのは今月1日に新聞各紙が報じた、「ご学友」の証言だ。

「陛下からお電話があったのは7月21日の晩でした。私的な会話を表沙汰にするつもりはなかったのですが、陛下のご意志と全く異なる結論が出されることを懸念して取材に応じました」

 そう語るのは学習院の高等科まで陛下と同級生だった明石元紹(もとつぐ)氏である。

 電話でのやり取りのなかで、陛下から、次世代を含めた恒久的な制度を望んでいる、と打ち明けられたという。

「陛下は、長い歴史を振り返れば天皇が途中で代わった例はいくらでもある、たとえ生きているうちに自分が譲位してもビックリするようなことではないんだ、と。“摂政は感心しない”とも仰っていました」(同)

 実は、明石氏は陛下のビデオメッセージが発表される2日前に、この「おことば」を官邸に報告している。

「知人を通じて学習院出身の麻生財務相に相談したところ、杉田官房副長官を紹介されたのです。そこで官邸に伺って陛下のお話を伝えました。ただ、杉田さんの反応は、“国会議員の意見を集約して恒久法を成立させるのは大変難しい。せいぜい一代限りのご退位しかまとめられそうにありません”というものでした。正直、“結論ありき”なのだな、と感じました。有識者会議の議論にしても、本当に陛下のお考えを反映しているのか疑問に思います」(同)

「陛下と親しいってことを言いたいだけ」

 明石氏は否定するが、官邸はこの発言を「宮内庁の差し金」と捉えたようで、萩生田光一官房副長官が、

「いきなりあんなことを言ってくるとは思わなかった。いまは特例法しか解決の道はないんだ。摂政を置くのが一番だけど、それがダメなら特例法しかない」

 と言えば、菅官房長官は、

「色んなことを言う人がいるけれど、結局、自分が陛下と親しいってことを言いたいだけなんだ」

 麻生氏も知人を介して明石氏に、

「官邸に足を運んでくれたことは有難いが、陛下とのやり取りを世の中に広めるのはやめてほしい」

 と、クギを刺したという。

 陛下のご学友に対して過剰とも言える反応を示すのも切迫感の表れであろう。

ご不満を募らせて…

 そこには、有識者会議の現状も影響している。16人の専門家へのヒアリングが終わった時点で、条件付きを含めた賛成が9人に、反対が7人。賛成はさらに、恒久法と特例法のどちらが望ましいかで割れている。

 退位に「賛成」の立場の百地章・国士舘大学大学院客員教授はこう語る。

「皇室典範が出来上がった頃には想定されなかった高齢化社会が到来しているため、終身制を原則としつつも例外的に譲位を認める必要があるのではないか。典範の附則に根拠規定を置き、それに基づいて特別措置法を作れば高齢による退位も可能になると考えます」

 だが、「反対」する平川祐弘・東大名誉教授は、

「陛下は完璧主義的な理想を掲げて、昭和天皇よりもさらに精力的に公務に当たってこられました。しかし、その理想を実現するのが肉体的・精神的に難しくなったから退位されるというのでは、これまでの積み重ねを台無しにしかねない。この度のおことばの結果、超法規に近い措置が講ぜられれば、悪しき前例になってしまうと危惧しています」

 出席者2名の見解を挙げるだけでこれほどの隔たりがある以上、会議が収束するのは困難と言わざるを得ない。

「陛下が有識者会議の行方をご憂慮されているのは間違いありません」

 と嘆息するのは、先の宮内庁関係者である。

「陛下は2回目のヒアリングが終わった頃から、いたくご気分を害されている。その後も新聞やテレビで報じられる会議の内容に触れて、ご不満を募らせていらっしゃるのです」

 こうした陛下のご様子は官邸も知るところで、懸念に拍車をかけている。

 陛下はご自身の「退位」について何を語るのか。

週刊新潮 2016年12月22日号掲載

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