「森喜朗元総理」に勝てない「小池百合子都知事」の貧弱ブレーン 五輪会場見直し巡り

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 東京五輪の競技会場見直し問題をめぐり、小池百合子都知事(64)と五輪組織委員会委員長の森喜朗元総理(79)との間で繰り広げられたバトル。

 既存の施設の利用を目玉にした“小池案”では、ボート・カヌー会場は「宮城県長沼ボート場」、競泳などの会場を「辰巳国際水泳場」、そしてバレーは「横浜アリーナ」を改修して使用するというものだったが、前の2つは×。バレー会場の結論は12月下旬まで先送りとなったものの、

「受け入れ先の横浜市が難色を示す文書を提出しており、実現は難しい情勢です」(都政担当記者)。

 小池知事の3連敗という声が聞こえてくるのだ。

バトル中

■上山に踊らされている

 では、なぜ3連敗しそうなのか。3競技会場の見直し案を作成したのは、都政改革本部特別顧問等で構成される五輪調査チーム。その中心となっているのが、上山信一慶応大学教授だ。

 先の都政担当記者が言う。

「長沼への移転案が出た時から、都のオリ・パラ準備局の職員は、長沼案が過去に検討されたことを伝え、その上でダメだった理由を説明しようとした。しかし、上山さんは『できない理由ばかり並べないで、できる理由を探して来い!』と聞く耳を持たないそうです」

 特別顧問は、知事の一アドバイザーに過ぎないが、

「彼は“開催都市の住民の意向と首長の権限は絶対”なんて、ツイッターで呟いています。基本的に組織委員会のことを見下していて、“あいつらは何も考えていない”と、“アホ”とか“馬鹿”呼ばわりしています。これじゃ、都の職員、特にオリ・パラ局の職員から白い眼で見られますよね」(同)

 小池知事は「上山先生」と呼び、彼に絶大な信頼を寄せているそうで、職員は諦めモードだという。

「森さんも“彼女は上山に踊らされている”と言っていた。少しばかり矩(のり)をこえているんじゃないかという感じで怒っていました」(組織委員会幹部)

■情報戦でも一枚上手

 一方、森氏は小池知事より一枚も二枚も上手だという。例えば、4者協議の場で、森氏は「横浜は迷惑していると聞いている」と発言。これに、小池知事は「(横浜市は)お決め頂いたら是非やりたい、と聞いている」と言い返す一幕があった。

「その後、新聞が横浜市が受け入れに難色を示す文書を提出していたと報じた。これで、森さんの方が正確な情報を掴んでいることが裏付けられました」(スポーツ紙デスク)

 都庁関係者も言う。

「小池さんは報道されるまで文書の存在を知りませんでした。文書は塩見清仁オリ・パラ準備局長宛でした。一説によれば、オリ・パラ局はこれまで組織委員会と連携してやってきたことから、彼が意図的に見せなかったと言われています。知事は報道の後、塩見さんを叱責したが、『文書の出所は虎ノ門ね』と疑っていた」

“虎ノ門”とは、組織委員会の所在地である。先の都政担当記者は、

「4者協議の数日前、ボート競技の長沼移転を断念したとの報道が続々出た。あれは組織委員会側によるリークです。横浜市の文書も組織委員会が書かせた。情報戦でも森さんの組織委員会の方が一枚上手でした」

 前出の組織委員会の幹部氏も、

「森さんは、長沼ボート場や横浜アリーナについて、宮城県の知事や横浜市の市長に自ら電話し、説得している。組織委員会とIOCは元々、これまでの関係があるので、話もできる。一方の小池さんは、コストカットという大義を掲げ、とにかく経費を削ればいいという感じ。他県やIOCへの根回しが足りなかった」

 双方の体制を比較すると、

「小池さんには上山さんら五輪調査チームがいるだけで、他に味方がいない。一方、森さんには組織委員会もあるし、オリ・パラ局もいる。組織委員会で森さんの秘書的なことをしている平山哲也役員室長は東京都からの出向職員だし、副事務総長の佐藤広さんは東京都の元副知事です。特に、佐藤さんは森さんと小池さんの間を行き来し、伝書鳩の役割を果たしています。小池さんには、彼女の立場でモノを言ってくれる人がいないから、事前調整で森さんと差がつくんです」(同)

■手付かずの問題も

 不幸なことに火種はまだある。小池知事はバレー会場に関し、クリスマスまで結論を先延ばしにするとした。森氏は「まだ何をおやりになるのか」と不快感を露(あら)わにしたが、

「他県で行う競技の費用負担の問題は一切、手付かずです。本来は、今年の夏から都と組織委、政府の間で費用負担の会議ができて、早ければ秋には結論が出ていたはずです。森さんが小池さんに費用負担の話し合いを始めたいと言っても『分かってますよ』としか言わない。この期に及んで、まだ競技会場見直しに拘(こだわ)るのかという思いでは」(組織委員会の幹部)

 五輪招致にも携わった都庁OBの鈴木知幸氏が語る。

「これまで、組織委が全て仕切っていました。都はお金を出すだけで、指揮命令できないのはおかしいでしょ、というのが小池さんの考え。結局、今回彼女がバッハ会長と面談することによって、直接交渉の道が開けた。これは彼女にとって大きな成果です。とはいえ、組織委と開催都市がバトルを始めるなんてあり得ない話です。IOCが4者協議の場を設けたこと自体が異例です。世界に対する東京のイメージも悪くなる。こんな対立構造を抱えたままでは、オリンピックまでに準備が間に合いません」

 つまらない権力闘争だけはうんざりである。

特集「『長沼ボート場』『横浜バレーボール』『競泳会場』まさかの3連敗!? 首魁『森喜朗』に勝てない『小池百合子』貧弱ブレーン」より

週刊新潮 2016年12月15日号掲載

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