三菱自動車、報酬限度を3倍に “濡れ手にササニシキ”のカルロス・ゴーン

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 名門スリーダイヤの三菱自動車が、「3(スリー)倍問題」に揺れている。今年4月、燃費不正問題が明るみに出た同社は、カルロス・ゴーン社長(62)率いる日産の傘下に入ることで再生を図っているが、道半ば、いや再建の緒にすら就いていない段階で、役員報酬限度額を3倍にするというのである。

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 業績が上がれば社員の報酬は増え、下がれば企業全体が臥薪嘗胆を強いられる。「経済力学」を考えれば、これが常識である。高速道路の上り車線を下ってはいけないのと同様、ごく当たり前の「交通ルール」と言えよう。しかしこの「常道」を、三菱自動車は「逆走」しようとしている。

コストカッター!?(画像:日産映像ライブラリーより)

 同社は12月14日の臨時株主総会で、取締役に払うことができる報酬の総額を、現状の約3倍の30億円にする方針を正式決定する。その対象には、もちろんゴーン氏も含まれる。随分と景気のいい話だが、

「燃費不正問題が響き、三菱自動車の2016年度の世界販売台数は、富士重工に抜かれて国内主要メーカー7社の最下位に転落する見通しです」(経済記者)

 この業績を見れば、どこにも「3倍」の根拠は見当たらない。こうした「交通違反」にも似た横紙破りについて、『カルロス・ゴーンの「答えは会社のなかにある」』の著者でジャーナリストの小宮和行氏は、

「間違いなくゴーンが決めたことでしょう」

 こう断じた上で、

「業績回復の成果も出ていないのに役員報酬枠の拡大を決める。話の順序として到底納得できません。そもそも、この方針を株主や部品会社などのサプライヤーはどう思うでしょうか。三菱自動車の不正に伴う業績不振で、廃業に追い込まれた部品会社もある。彼らが『本社のお偉いさんだけたっぷりもらって、俺たちは何なんだ』と憤っている姿が目に浮かびます」

 実際、自動車業界に詳しい経済ジャーナリスト曰く、

「ゴーンあるいは日産流のやり方についていけず、三菱自動車を辞めた生え抜きの社員が既に100名以上いると聞いています」

 一方、

「日産の弱点だったアジアに三菱自動車は強く、今後、ゴーンは三菱商事のネットワークも使えるようになる。彼にとっては濡れ手で粟どころか、濡れ手にササニシキですよ」(小宮氏)

 なお、今年同じく燃費不正問題が発覚したスズキの名物会長、鈴木修氏は、

「うちは監督責任も考えて、役員報酬を減額しました。しかし、考え方は各社各様ですからね。三菱さんは三菱さんの常識に基づいての判断でしょう」

 と、チクリ。

 三菱自動車の益子修社長に、3倍方針を決めたのはゴーン氏なのか確認すると、

「会社として決めたこと」

 と、「上司」を必死に擁護しつつ、

「将来、外国人の(高給)人材などが必要になった時のことを考えての布石です」

 不正問題、ゴーン問題、そして役員報酬限度額問題。三菱自動車には、三重苦ならぬ「3倍苦」が立ちはだかっているようだ。

ワイド特集「師走の忘れ物」より

週刊新潮 2016年12月15日号掲載

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