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因果関係に「科学的根拠なし」の結果はなぜ隠されたのか――子宮頸がんワクチン副反応問題

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新潮45 2017年5月号 
2017/4/18発売

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15歳~22歳の女性63名がワクチンの副反応で健康を害したことを理由に国とワクチンメーカーに損害賠償を求め、提訴した。(※イメージ)

 子宮頸がんワクチンを打った少女たちが激しく痙攣する――そんな衝撃的な映像をニュースで見たことがある人は少なくないだろう。

 2016年7月27日、15歳~22歳の女性63名が、ワクチンの副反応で健康を害したことを理由に国とワクチンメーカーに損害賠償を求め、提訴した。

 しかし、ワクチンと被害を訴える少女たちの症状の因果関係は科学的に証明されていない。それどころか、薬害と言えるような因果関係がないことを証明する名古屋市調査の最終解析は、なぜか公開されなかった。医師でありジャーナリストの村中璃子氏は自ら情報開示請求を行いこの結果を入手し、「新潮45」12月号でその内容と騒動の実態を明らかにした。

■“偽発作”という見解

 日本では2013年4月に定期接種化された子宮頸がんワクチンだが、そのわずか2カ月後、「積極的な接種勧奨の一時差し控え」となった。
このころ、冒頭に挙げた痙攣する少女たちの映像のDVDが全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会によって販売され、大きな世論が作られた。
 映像について、村中氏はこう記す。

〈ある小児科は言う。
 「初めてあの映像を見た時、あぁ、たぶん、よくいる患者さんだねって小児科医同士で言ったものです」
  別の小児科医は、
 「今はもう誰も子宮頸がんワクチンを打っていないから打っていない子しかいませんが、同じような症状の子は今でもたくさん来ていますよ」
  と言った。〉

 心の葛藤やストレスが引き金となって、脳に異常は無いのに手足をばたつかせたり全身をくねらせる、といった痙攣発作は、「偽発作」と呼ばれ、精神科や小児科、神経内科の教科書でも紹介される症状だ。

■危険な治療

 一方で、子宮頸がんワクチンの危険性を訴える医師たちもいる。少女らの症状は広範囲に及ぶため、その治療法もさまざまだが、中には危険なものも含まれる。
 記憶障害を訴える10代の少女に高齢者の認知症薬を処方、身体への負担が大きいだけでなく1回約100万円と高額な「血漿交換療法」、少女の身体にメスを入れて脊髄管内に電極を埋め込み電流を送る「脊髄電気刺激療法」……。

〈いずれも、治療の選択が検査や画像など、客観的データに基づいていればよいが、「患者が望むから」「患者が良くなったというから」という理由で施行するのは危険だ。〉

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■解析結果はなぜか公表されず

 ワクチン薬害報道が高まるなか、名古屋市は、市内の中学3年生から大学3年生相当の女性約7万人を対象とし、子宮頸がん予防接種経験の有無と因果関係を疑われた24の症状について大調査を行った。
 2015年12月14日には、河村市長みずから記者会見を行い中間解析を発表、「最終報告は2016年1月中をめどに出す」と言った。
 しかし、その約束は果たされなかった。
 それどころか、2016年6月には中間解析を含む調査の速報が名古屋市のウェブサイトからひっそりと削除されたのだ。代わりに、解析結果ではなく、集計結果の数字だけが並ぶ生データがPDFで公開されるに留まった。
 なぜ、最終解析は記者発表や公開がされなかったのか。その経緯と最終解析の全容については「新潮45」本誌を参照されたいが、最終結果は〈ワクチン接種と24症状の間に薬害と呼べるような因果関係がないことを意味する〉ものだった。

 村中氏は、以下のように結ぶ。
〈専門的知識を持つ人にも持たない人にももう一度考えてほしいのは、薬害を訴える人たちに対して、科学的根拠もないのに薬害だと同調することが必ずしも善ではないことだ。大切なのは「子宮頸がんワクチンのせいだ」と言う大人たちに囲まれ、治るきっかけを失ってしまった少女たちが、1日も早く回復することである。長年にわたる訴訟の末、薬害は認められないという結果が出た場合、ワクチン被害を信じ、ワクチンを恨んで青春を過ごした少女たちは誰を恨めばよいのか。〉

※「新潮45」1月号でも引き続きこの問題を取り上げます

  • 新潮45
  • 2016年12月号 掲載
  • ※この記事の内容は掲載当時のものです

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