石原さとみの「校閲ガール」を校閲 「ウチなら不採用」

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 石原さとみ(29)主演の新作ドラマが高視聴率を叩き出し、おもむろに巻き起こった“校閲”ブーム。と、書いたところで小誌(「週刊新潮」)の校閲担当者から指摘が入った。〈「おもむろに」は、「不意に」や「急に」ではなく、「ゆっくりと」の意味です〉。……失礼しました。かくも厳格な言葉のプロにドラマを校閲してもらうと――。

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 そもそも、出版社における校閲部とは、原稿の誤字脱字はもちろん、時に文章の矛盾点まで洗い出す職人集団のことだ。もっとも、作品のクオリティを支える重要な部署ながら、黒子のイメージが強いのも事実。

 にもかかわらず、今月5日にスタートした「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」(日テレ系)は、予想外のド派手なスタートを切った。日テレ関係者も、うれしい悲鳴を上げる。

「まさか初回に12・9%の高視聴率をマークするとは考えていなかった。何しろ、前クールに放映された、全てのドラマの平均視聴率を上回っていますからね。日テレの“水曜22時”枠は、北川景子の『家売るオンナ』といった、女性主人公の職業モノで支持を集めてきました。とはいえ、馴染みの薄い校閲がテーマのドラマでこの数字は驚く他ない」

 今回のドラマで石原は、ファッション誌の編集者を希望して出版社に入ったものの、なぜか校閲部に配属されてしまうヒロインを演じている。編集者を「このタコ!」と叱り飛ばす、勝ち気なキャラクターが人気の一因だそうだが、

「校閲は、原稿の最初の1文字から最後の1文字まで同じテンションで読むことが何よりも大事です。石原さんが演じるキャラクターは落ち着きに欠けるし、編集者になりたいと公言しているので、うちの校閲職では採らないと思います」

 と苦笑するのは、小社(新潮社)の飯島秀一校閲部長である。

黒子には向かない

■記憶力頼みはミスの元

 手前味噌で恐縮だが、新潮社の校閲部と言えば、出版業界では“超一流”として知られた存在。ドラマの放映に際しても、新聞社やテレビ局からの取材依頼が殺到した。

 そんなプロ集団を率いる飯島氏に“不採用”を通告されたヒロインだが、ドラマには10年以上前のファッション誌の内容を諳んじるシーンがある。この記憶力は校閲向きではないのか。

「中途半端に記憶力が良いと、原稿を読み流してしまうので却って怖い。たとえば、徳川の6代将軍が誰かなど、自分が“知っている”と思ってしまう部分は間違えがちなのです」

 一方、校閲担当者が小説に登場する家の模型を作って、ストーリーの誤りを指摘するシーンについては、

「さすがに模型を作ることはないですが、見取り図は大半の人が描きます。また、小説で描写される風景を確認するために、現地を訪れることも現実にはまずありません。地図を広げれば、等高線から“この位置だと対象物が見えない”と判断できるし、一方通行を避けるルートも調べられます。最近は、グーグルストリートビューを参考にすることも多いですね」

 他にも、

「ドラマで指摘された“満天の星空”は、“一番最初”と同じく意味が重複します。ただ、本来の意味を飛び越えた強調の表現とも取れる。ら抜き言葉を含め、頭から全てを間違いとするのはどうかな、と思います」

 視聴率は合格点でも校閲のプロの採点は厳しかった。

ワイド特集「君の名は」より

週刊新潮 2016年10月20日号掲載

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