猿之助の時事ネタ「膝栗毛」 “舛田添門之丞”が領収書を請求

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 お代官様の“舛田添門之丞”と“野村泣左衛門”とが、ホテル三日月ならぬ旅籠「五日月屋」で大盤振る舞い。湯水のように金を使うがその度に、「領収書をくれ、名目は会議費」。訝しむ従業員は「旅行としか思えん」――。

 現在、歌舞伎座で演じられている「東海道中膝栗毛」、いわゆる弥次喜多ものの一場面なのである。

「会場は爆笑ですよ。市川染五郎演ずる弥次郎兵衛、市川猿之助演ずる喜多八が、箱根の宿で、代官に化けての豪遊なのですが、名前が名前でしょ。歌舞伎がこんなに早く時事ネタを取り入れるなんて……」(観劇者)

 その後も、借金取りから逃れるために富士川に飛び込んだ二人は海へと流され、岩場と思った鯨の潮に吹き飛ばされて、たどり着いたはラスベガス――といった具合なのだ。ちなみに、ベガスで出飛人河童劇場(でいびっとかっぱしあたあ)の支配人を演じるのが中村獅童。

「元々、歌舞伎は時事ネタを取り込むのが江戸以来の伝統です。現代においては『膝栗毛』が時事ネタを取り込みやすい話なんです。今回は脚本・演出に猿之助の名前が入っているので、もっとハチャメチャになるかと思っていました。だってマンガ『ワンピース』を歌舞伎にしてしまった男ですからね。でも、客を置いてきぼりにすることもなく、ちょうどいい加減だったと思いますよ。SMAP解散のネタも最近は入れたそうですね」

 とは早稲田大学教授で演劇評論家の児玉竜一氏。

 歌舞伎座の恒例「八月納涼歌舞伎」といえば、これまでは勘三郎を中心に三津五郎や福助らが野田秀樹脚本ものなど、多くの新作に挑戦してきた。

「8月は興行に適した時ではないのですが、彼らがひっぱってきた。しかし、勘三郎も三津五郎も世を去り、福助も病に倒れた。そこへこれまで8月の歌舞伎座に出たことのない、猿之助の登場です。客も彼なら何かやってくれると思って切符を買うし、梨園も期待しているのだと思います」(同)

 舛添もとい舛田代官を嗤えるのは8月28日まで。

週刊新潮 2016年9月1日号掲載

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