ヤクルト山田哲人、六冠王の目前でぶつかる「壁」とは

野球週刊新潮 2016年7月14日号掲載

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 好事魔多しというけれど、暗影など微塵も窺えないのが、ヤクルトの4番打者・山田哲人(23)である。昨年のV戦士も、今季はチームが最下位争いと低迷。ひとり「打撃六冠王」を見据えて気を吐いている。行く手に壁はありやなしや。

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 10年のドラフトでヤクルトが「外れの外れ」で1位獲得した山田は、14年に日本人右打者シーズン最多安打の新記録を樹立。そして昨年、これまた球史に残る成績を残している。

「ソフトバンクの柳田悠岐とともに3割30本30盗塁のトリプルスリーを達成し、あわせて史上初となる本塁打王と盗塁王の同時獲得も達成したのです」

 とは、スポーツ紙記者。

「プロ入り6年目の今年はさらに快調で、現在のところ打率・本塁打・打点は2位以下を大きく引き離して“暫定三冠”です。また出塁率がリーグ1位、安打数と盗塁でもトップ争いを繰り広げています」

 三冠プラス盗塁王となれば、プロ野球史上初の快挙。それをも上回る「六冠」が見えてきたというのだ。

 野球解説者の高木豊氏によれば、

「今季は打てる範囲が広がりました。具体的には、昨年苦手としていたスライダーを克服した点です。アウトローに来た球のバッティングが唯一の弱点でしたが、そこに3球続けて投げられるピッチャーはいません。山田もアウトローをホームランにしようとは思っておらず、ファウルでしのぐ。そのうち失投して打たれるという状況が続いてます」

 欠点らしい箇所が見つからないのだという。

「大概の対戦ピッチャーが弱腰で、勝負をしたがらない。それはフォアボールの数がリーグトップというところにも表れています」(同)

■結果を求めると…

 スポーツジャーナリストの染谷恵二氏も、

「天敵だった広島の前田健太がメジャーに行ったことも大きい。彼の落ちる球、チェンジアップ、緩急のつけ方には苦しんでいました。マエケンの方も『あいつには負けない』と対抗心を燃やし、一球で仕留めるのではなく、配球パターンの中でウイニングショットを狙っていた。その真っ向勝負が互いにプラスになっていたのですが、現状では山田にライバルがいないのです」

 向うところ敵なしと映る中、不安材料と思しきは、

「春先のキャンプでも訴えていた腰痛が、最大の“爆弾”です。彼の持ち味であるコンパクトなスイングは、上体を極限まで絞り込むからできるのです。昨年と最も変化した点は、バットのスイートスポットにボールが当たる時間が長くなったこと。ギリギリまで引き付けて振り込むから、その分遠くに飛ぶ。そうしたフォームを支えている腰の痛みを、どこまでカバーできるかが今後の課題です」(同)

 加えて、さらなる高みを目指す意識も“裏目”に出ないとは限らない。

「優勝を狙えないチームに居ながら個人タイトルが次々転がり込んでくれば、『自分の打撃でチームを優勝に』という意識も変わっていき、メジャーにも気持ちが動くでしょう。ですが、松井秀喜もヤンキース移籍が決まった02年、4月にFA権を取得してから夏までは不調でした。『結果はついてくる』ではなく、気が逸(はや)って自ら結果を求めに行くと、往々にして壁にぶち当たることになります」(同)

 やはり基本は「心技体」だというのだ。

「ワイド特集  富める時も貧しき時も」より