総工費3兆円、日立の原発プロジェクトはどうなるのか 英国EU離脱20の疑問(10)

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軽水炉原発4基を組み立てる「日立」は大丈夫か?

 在英日本商工会議所によると、イギリスに進出している日本企業の数は900~1000社。なかでも日立製作所は、かの国を“上得意”としてきた。

EU崩壊』の著者でロンドン在住の国際ジャーナリスト・木村正人氏が言う。

「日立は2005年に高速鉄道の車両を174両受注すると、さらにIEPといわれる都市間高速鉄道、そして、グローバル本社の英国移転と、イギリスでのビジネスにどっぷり浸かっています」

 同社が鉄道事業でイギリスに投じた資金は約110億円。さらに、12年には現地の原発企業を買収し、少なくとも4基の軽水炉の計画を進めているのだ。総工費3兆円のビッグプロジェクトである。

「欧州ではアレバ(仏)やシーメンス(独)などの大手企業が事業展開しており、日立が食い込むのは難しかった。しかし、イギリスに進出できたことで欧州に拠点を築くことが出来たわけです」(ロンドン特派員)

 それが、今回の「離脱」でどうなるのか。日立製作所の広報担当者が言う。

「鉄道についてはニュートンエイクリフという場所に工場を持っており、数年分の受注が取れています。イギリス国内向けの供給で手いっぱいですから、EU域への輸出は当分考えていません。また、原発は契約相手がイギリス政府なので離脱があってもきちんと対応してもらえるはず。原発は日本から輸出し、現地で組み立てるという形なので離脱でややこしい関税の問題が発生することはないはずです」

 むしろ、EU離脱を見て取った中国メーカーが安値攻勢をかけてくるほうが心配なのだとか。

「特集 ヘイトと衆愚が理性にまさった? 地球的大混乱で誰が笑うか? まさかの英国『EU離脱』20の疑問」より

週刊新潮 2016年7月7日号掲載

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