今さら〈EUって何?〉が検索急上昇…英国の衆愚 英国EU離脱20の疑問(6)

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今さらEUを検索するイギリス人のユーモアと衆愚

 ビートルズのドラマーだったリンゴ・スターは、かつて記者から“ベートーベンについてどう思うか”と問われ、こう切り返した。

「いいね、特に歌詞がいい」

 離脱が決まった直後から、英国ではそんな皮肉交じりのジョークとしか思えない現象が起きている。

 何しろ、EUに関する検索ワードランキングでトップに急浮上したのは、

〈EU離脱の意味って?〉

 ちなみに2位以降には、

〈EUって何?〉〈EUには何カ国が参加してるの?〉

 が続く。英国人一流のユーモアと捉えようにも、

「すでに再投票を求める300万人以上の署名が集まった。なかには事態の深刻さに気付いた離脱派も多い」(在英ジャーナリスト)

 のでは笑い話にもならない。国際ジャーナリストの山田敏弘氏はこう指摘する。

「離脱に投票した国民の多くは、その影響について想像力を働かせていませんでした。長引く不況と、高騰する不動産価格のせいで貧しい生活を強いられる人々は、離脱派の“移民の増加が諸悪の根源だ”という主張に乗せられてしまった。これはドナルド・トランプ氏の手法と瓜二つです」

 離脱派は当初、英国がEUに支払う毎週3億5000万ポンド(約480億円)の拠出金を社会保障費に回すと公約した。しかし、リーダー格の独立党・ファラージ党首は投票後に“使途は確約できない”と前言を撤回。民衆はまんまと甘言に踊らされた格好だ。

 この衆愚の選択こそが英国の笑えない現実なのだ。

「特集 ヘイトと衆愚が理性にまさった? 地球的大混乱で誰が笑うか? まさかの英国『EU離脱』20の疑問」より

週刊新潮 2016年7月7日号掲載

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