欠陥エアバッグでリコール タカタ社長を支えるゴッドマザー

企業・業界週刊新潮 2016年6月30日号掲載

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 約7180億円の売り上げに対して、欠陥エアバッグのリコール費用は1兆円を下らない。軍事用パラシュートから、シートベルト製造に転換して成功を収めた自動車部品メーカーのタカタ。1933年の創業以来、最大の危機に瀕しているはずだが、社内には安穏とした空気が漂っているという。

 タカタの株主総会は6月28日。米投資助言会社ISSは、高田重久会長兼社長(50)の取締役再任議案への反対を推奨している。

「株主総会で、矢面に立つ重久さんは不愉快な思いをするかもしれません。ですが、会社提案の議案が否決される可能性は99・9%ないでしょう」

 こう苦笑するのは、全国紙の経済部デスクだ。

「タカタの株主構成は個人筆頭株主の重久会長兼社長が2・9%、高田家の資産管理会社“TKJ”が52・1%を占めているので、一般株主がいくら騒いでも痛くも痒くもありません」

 そのTKJの実権を握っているのが、重久氏の実母の暁子さん(76)だという。自動車専門誌の記者によれば、

「慶応大学法学部卒の暁子さんは、学生時代に“タカタの2代目社長”重一郎さんと知り合って結婚しました。彼女の実父は、凸版印刷“中興の祖”と呼ばれる山田三郎太。また、実兄の妻は津軽家14代義孝氏の娘で、その妹は常陸宮華子さま。ダイエーの中内家とも縁戚にあたります」

 留学経験がある彼女は、英会話も堪能。タカタでは常務取締役、取締役相談役を経て、9年前から特別顧問に就任。重一郎氏の存命中には“社長の片腕”と評されたこともあり、タカタ株を個人でも2・1%にあたる171万株所有している。

「暁子さんは“交通事故死の撲滅”を掲げる公益財団法人タカタ財団の理事長、チャイルドシート連絡協議会代表幹事、そしてTKJ取締役の肩書も持ち、業界では“タカタのゴッドマザー”と呼ばれています」(同)

■株を売れば億単位

 彼女の存在が浮き彫りになったのは、昨年6月に開かれた株主総会後の記者会見だった。経済誌記者がこう振り返る。

「株主総会後の記者会見で、重久さんは“経営の意思決定に暁子さんの意思が反映されているのでは”と問われると、“重要な判断は私が決める”と語気を荒らげたのです。エアバッグの欠陥問題浮上後、タカタはなかなか記者会見を開かず、当時の外国人社長をクビにした。それを指示したのが暁子さんだと業界内で囁かれていたので、やはり図星だったのでしょう」

 目下、タカタはシートベルトとエアバッグでともに世界シェアの約20%を占め、国内市場は独占状態だ。

「米国の大手投資ファンドKKRなど27社が、タカタの支援に名乗りを上げている。社内には“リコールの費用は、自動車メーカーと分担するから全額負担にならないし、国内メーカーで他に代わる会社がないから今後も安泰”との考えが根強く残っています」(同)

 が、メガバンク関係者はそうした考えに懐疑的だ。

「タカタの2016年3月期決算は、リコールの関連費用442億円の特別損失を計上し、130億円の最終赤字になりました。今後、支援企業はタカタに株式の譲渡を迫るはず。重久さんが責任を取って経営から身を引いて、スポンサーが新たな経営者を送り込んできたら、社員たちは安穏としてはいられないでしょう」

 しかし、重久氏は個人所有の株をスポンサーに売ると最低でも億単位の現金が懐に入る。今後も、高田家だけは安泰なのだ。