“灘”出身の高島さんがハーバードへ進学したワケ めざせ「米英名門大学」奮闘記(1)
東大も世界的にはそんなレベルなのか! 昨今の大学ランキングを見て、そう思う若者は多いという。で、目指す先は米英の名門大学。むろん卒業したと詐称するのは簡単だが、受験するにも、合格して世界の俊英にもまれるにも、大変な奮闘が強いられるようだ。
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ハーバード大学
「今年、高校1年生になった娘が、東大と海外大学の両方を狙いたいと言うので、今、塾を探しています。東大入試に対応できる数学の塾と、海外のトップ大学に進学できるだけの英語力をつけられる塾の両方です」
と、つい最近外資系金融企業を退職したばかりの永田さん(仮名)は言う。
「娘が中学1年生のときに、妻がシンガポールに赴任し、娘もついて行きました。現地のインターナショナルスクールに通ううちに、海外への進学という選択肢が視野に入ってきたようです」
この春、娘は国立大附属の難関高校に合格して日本に戻り、現在は永田さんといっしょに暮らしている。
永田さんも妻も東大出身のエリートで、インターナショナルな職場をその目で見てきた。娘がハーバードやイェールに行ってくれるなら、これからの時代、それもありだと考えている。
ハーバードをはじめ海外トップ大学への進学を支援する塾「Route H(ルートエイチ)」の担当者は、
「過去3年間で海外大学進学についての問い合わせは、ほぼ倍増しています」
と証言。東大を頂点とする日本の学歴ヒエラルキーが変化し始めているのだ。
「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」世界大学ランキングによると、東大は2010年度から14年度まで、ほぼ20位台に位置していた。しかし15年度は43位に凋落、世界には東大よりも「良い」大学がたくさんあると、広く認知されるようになってきた。経済のグローバル化が叫ばれる中、大学についても海外に視野を広げる子供や保護者が増えることは、自然な流れなのかもしれない。
■“灘”出身のハーバード生、高島さんの場合
高島崚輔さんは灘中学・高校の出身。東大でも京大でもなく、ハーバードを選んだ。ハーバードの入学者数は毎年約1600名。そこに全世界から約3万名の応募がある。しかもアメリカ人以外の合格率は1%といわれる超難関である。
「灘ではディベート同好会に所属していました。英語で討論する部活です。高2のとき、模擬国連の全米大会に日本代表として出場し、優秀賞を受賞。その後、自分が世界レベルでどこまでやれるのかチャレンジしてみたくなり、海外の大学を目指すことに決めました」
ただし、高島さんはいわゆる帰国子女ではない。
「幼稚園のころから公文式を通じて英語に触れ、小4で英検準2級に合格しました。でも中学受験勉強をする間に英語を忘れてしまったため、中学で学び直しました。教科としての英語は得意でしたが、高校では英検やTOEICは受けていません。自分の場合、むしろ『純ジャパ(帰国子女ではない純粋ジャパニーズの略)』だったことが良かったと思っています。日本からハーバードを受験する人には帰国子女が多い。『純ジャパ』は逆に目立つはずだと考え、入学志願書ではそこをアピールしました」
特にハーバードなどアメリカの大学は、能力が同じくらいなら、異なるバックグラウンドをもつ受験生を合格させようとする傾向があると言われるのだ。
■ハーバード対策
灘に在学していれば、東大対策ならお手の物。しかし海外の大学となるとさすがに情報は少ないはず。どのように対策したのか。
「ディベート同好会の2つ上にハーバードに進学した先輩がいて、彼のアドバイスが大きな後押しになりました。ルートエイチでエッセイやSAT(アメリカの大学を受験するときに求められる学力評価テスト)の指導も受けました」
日本では海外大学受験対策に関し、間違った認識も広がっていると指摘する。
「課外活動をたくさんやっていたほうが有利だと言われていると思いますが、受験のための課外活動という発想は誤りです。心の底からわき上がる興味に基づいた活動でなければ意味がなく、手を広げすぎると、逆に一貫性がないと判断される可能性すらあります」
アメリカの大学にはそれを見極めるプロ集団、すなわち世界中から願書を受け取り、入学者を選ぶ専門部署「アドミッションオフィス」があるのだ。
■学生生活の様子は……
現在、ハーバードの1年生。どんな生活か。
「寮生活なので、ラグビー部の練習を夜中にすることも。図書館も24時間開いているので、時間をめいっぱい活用できます。今は中国語、数学、エネルギー問題、ライティングを選択しています。中国語は漢字が読める点で有利。数学は万国共通。エネルギー問題については、試験前には友人が一緒に復習してくれたので、不安は小さくなりました。困るのはライティングの授業です。予習用に渡される課題図書の量が多く、読みこなすだけでも四苦八苦(笑)。さらに授業はディスカッション中心。なかなか発言できないので最初に教授に相談しました。教授は私が英語力で不利なのを認めたうえで、最初に手を挙げ、発言してしまうというテクニックを教えてくれ、キミが手を挙げたら優先的に指名してあげるからと励ましてくれました」
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「特別読物 志願者急増! めざせ『米英名門大学』奮闘記――おおたとしまさ(育児・教育ジャーナリスト)」より
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