シャープはどこで間違えたのか? グーグルやアップルになれた「もうひとつの未来」

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真のイノベーションとはどういうものか

 1960年代から30年間続いた世界的な電卓戦争を主導したのが佐々木であり、その電卓戦争こそが現在のデジタル社会の扉を開けたといっていい。

「各社が命を削りあうような開発競争を繰り広げた結果、半導体の性能は劇的に向上し、価格は劇的に下がりました。わたしたちが今日使っているパソコンやスマートフォン、テレビなどの家電、デジカメなどはすべてその恩恵に浴しています。そして、半導体を進化させたのは、佐々木さんが信じてやまないオープンイノベーションの精神でした」(大西さん)

 1989年に佐々木が去ると、シャープはその教えに背を向けるかのように唯我独尊の道を進み始め、ついに今日に至る。しかし、佐々木の精神は、孫正義やスティーブ・ジョブズなど、薫陶を受けた起業家たちに引き継がれた。また、技術をオープンにしていこうという姿勢は、ウェブ時代のオープンソースの発展やグーグルのOS「Android」の戦略などにも見られる。デジタル社会はオープンイノベーションに支えられているのだ。シャープが「ロケット・ササキ」の率いたシャープであり続けたなら、今日の凋落はなく、ソフトバンクやアップル、グーグルのような企業になっていたかもしれない。

 イノベーションの重要性を説く声は多いが、真のイノベーションとはどういうものかを教えてくれる事例は少ない。シャープの盛衰を決めた伝説の技術者、佐々木正の人生は、きわめて今日的な示唆にあふれている。

デイリー新潮編集部

2016年5月24日掲載

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