堀江貴文「コンビニは牛丼を売るべきだ」〈堀江貴文VS成毛眞「私のキュレーション術」(1)〉

社会週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

  • 共有
  • ブックマーク

 現代社会を生き抜くために重要なのは、情報を収集して選別する力。即ちキュレーション術である。本誌(「週刊新潮」)連載の「逆張りの思考」が単行本として発売されたのを記念し、著者の成毛眞氏(60)と旧知の堀江貴文氏(43)がそれぞれのキュレーション術について語り合った。

 ***

【成毛眞】 お久しぶりですね。おっと、今日はお洒落な服を着てるけど。

【堀江貴文】 実は服選びをアウトソーシングしているんですよ。

【成毛】 スタイリストに?

【堀江】 それはもう古い考え方です。そうじゃなくて、服を選ぶのが好きな友達っていますよね。そういう人に通販サイト・ZOZOTOWNでおすすめの服のURLをLINEで送ってもらい、気に入ったのを買ってます。

【成毛】 へえ、ネット通販なのに試着しなくて平気なの?

【堀江】 ZOZOTOWNはどんなブランドの服も採寸し直しているから、サイズで失敗することはなくて、すごく便利です。

【成毛】 服を買うなら百貨店が当たり前だったけど、出掛けるのが面倒という人もいるし、いいビジネスになるんじゃないかな。

【堀江】 靴でも鞄でも、ゴルフクラブでも何にでも応用できますよ。モノがあふれている今は、キュレーションが大事だと思います。

【成毛】 情報を収集して選別する力。週刊新潮では「逆張りの思考」という連載をやらせてもらっていて、単行本になったんだけど、タイトルが『これが「買い」だ─私のキュレーション術─』。つまり、キュレーションこそが重要だと。今日は、現代の日本で我々が生き抜くためにいかにキュレーションやリテラシー(情報を活用する力)が大事か。そして、今お互いが何に注目しているのか、ざっくばらんに話したいと思ってます。

【堀江】 分かりました。

成毛眞氏

■コンビニは牛丼を売るべき

【成毛】 堀江君は『君はどこにでも行ける』(徳間書店)という本を最近出版されましたよね。読ませてもらうと「日本は安くなった」と書かれている。全くその通りだなと思いました。先日、オーストラリアのシドニーで家内と娘と3人でラーメンを食べたら、お会計が5800円くらいだったので高いなと思った。でも、よく考えたら日本が安いんですよね。だから中国人観光客も爆買いをする。

【堀江】 日本だけが相対的に安くなっているんです。だけど、ラーメンがそんなに高くて生活できるのか、疑問に思います。アメリカでは、最低賃金を15ドルに引き上げると決めた州が多いのですが、それで大丈夫なのかな、と。

【成毛】 15ドルということは約1600円で、1杯2000円のラーメンはなんとか食べられるかもしれない。でも、東京の最低賃金は907円だから、たとえばコンビニ店員が、そのラーメンを食べるのに2時間ちょっと働かないといけない計算になるね。

【堀江】 そういえば、コンビニで日本人の店員を見かけなくなってきましたね。

【成毛】 中国人の店員をよく見るよね。

【堀江】 そういう仕事はしたくないという日本人が増えているのでしょう。やらなきゃならない仕事が多いのに、いくらでも替えがきくから、時給が上がらない。

【成毛】 その一方で、コンビニ店員の負担は増えています。私は、揚げ物を揚げたりおでんを補充したりする延長線上で、コンビニ店員がレジ脇でスシを握るようになるんじゃないかと思っているのだけど。コンビニにはまだまだビジネスチャンスが転がっている。

【堀江】 これからのコンビニで売るべきものは、牛丼だと思いますね。今も牛丼を売っているけど、そのうちカウンターで具をよそってご飯にかけるようになるんじゃないかな。コンビニの商品開発力をもってすれば、旨い牛丼はすぐに作れるはず。そうなると、チェーンの牛丼店はあっという間にコンビニに客を奪われますよ。

【成毛】 そうなれば、コンビニのイートインスペースは広くなるでしょうね。

【堀江】 コンビニの近くでイートインのための貸しスペースを提供したらいいんじゃないかな。昼だけじゃなくて夜もそうすれば、コンビニで買ったもので宴会をすることも可能です。イートイン居酒屋になる。そうなる一方で、ものを売るだけのコンビニは無人化しますよ。

【成毛】 無人化されればコンビニに行くたびに「なんとかポイントカードは持っていますか」と聞かれなくて済むようになるから、ありがたいな。あれって面倒だよね。その一方で、ポイントカードを持っていながら、マイナンバーに反対している人がいますよね。私はそういう人の気持ちが分からない。ポイントカードには、購買の記録が丸裸になるリスクだってある。それを運営会社に知られるのは良くて、政府に自分の収入を知られるのがどうして嫌なのか、と。

堀江貴文氏

■ゼロリスク信仰者

【堀江】 そういう人っていますよね。僕は医療の分野で感じることがあります。たとえば胃がんの原因になるピロリ菌、特に東アジア型は凶悪なので、除去した方がいいんですが、「私、ヨーグルトを食べているので大丈夫です」とか言う人がいるんですよね。なんでそう考えるのかというと、やっぱり、リテラシーが足りないからですよ。

【成毛】 理系的な発想というか、データを見る力がないんですかね。子宮頸がん予防ワクチンを巡る動きを見ていてもそう思いますね。たしかに副作用が出た人はいます。それは気の毒ですし、問題だと思うのですが、だからといって、絶対反対だと主張してそれを通してしまうと、その後、ワクチンのおかげで助かったはずの命を脅かすことになるでしょう。

【堀江】 先のピロリ菌について言うと、安全だと言っている医者もいますが、それは大抵白人。東アジア型と自分たちとは関係がないと思っている。ある程度年齢を重ねると、ピロリ菌は既存の抗生物質で除去できないケースもある。というのも、それまでに多くの抗生物質を摂取していて、耐性ができてしまっているからです。だから今、除菌には、一世代前と言われるペニシリン系の抗生物質が使われることが多いんです。

【成毛】 なるほど、それなら耐性がないということですね。

【堀江】 一方で、ペニシリン系の抗生物質には、稀にアレルギー反応を起こす人がいるんです。すると100%安全じゃないと嫌だというゼロリスク信仰者が噛みつく。子宮頸がん予防ワクチン同様の構図が生まれます。

【成毛】 科学的に100%完璧なものなんてないけども、どちらが有効かという話。

【堀江】 もちろん、除去すれば100%胃がんにならないという思い込みも危険です。除去しても検診を受けて発見されるケースもありますから。

【成毛】 除菌すればオーケーという単純な話ではないわけだ。

【堀江】 そうなんですよ。ただ、いずれにしても、除菌したり検診を受けたりして、胃がんになる人が減れば、亡くなる人は減るし、国全体の医療費も下がるから良いことずくめだと思うのですが。

【成毛】 ところが現状は、予防や対策をしている人が、そうでない人の医療費を負担する格好になっています。

【堀江】 皆保険制度のないアメリカでは、医療保険会社が大腸がん抑制のために大腸内視鏡検査を推奨するなどして、検査を受ける人が増加。大腸がん患者や大腸がんで死亡する人が減りました。日本でも検査を受ければ受けるほど、保険料を安くする方法をとればいい。

【成毛】 そうすると、検査を受けない人の保険料が相対的に上がることになる。検査をしないでがんになったら、手術にも抗がん剤にもお金がかかるようになる。それでも予防しないのは、やっぱりリテラシーがないということ。そういう人が増えている気がします。

 ***

(2)へつづく

「特別読物 『逆張りの思考』【拡大版】『これが「買い」だ―私のキュレーション術―』出版記念対談――堀江貴文VS.成毛眞」より

成毛眞(なるけ・まこと)
1955年北海道生まれ。中央大学を卒業後、マイクロソフト株式会社に入社。同社代表取締役社長を経て、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立する。書評サイト「HONZ」代表も務める。著作に『面白い本』など。最新刊は『これが「買い」だ』。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年福岡県生まれ。SNS media&consulting 株式会社ファウンダー。現在は自身が手がけるロケットエンジン開発を中心にスマホアプリのプロデュースも行うなど、幅広く活動している。近著に『君はどこにでも行ける』『ゼロ』など。