習近平が敷く「パナマ文書」情報規制 中国指導層の資産隠し

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〈民は由(よ)らしむべし、知らしむべからず〉とは孔子サマのお言葉。本来は「為政者が民衆を従わせることはできるが、姿勢まで理解してもらうことは難しい」の意で、「信なくば立たず」同様、為政者の心得を説いたものだが、「民衆は為政者に頼らせればよい、情報など伝えるな」と曲解する向きもいまだにあるようで。

「政権発足当初から〈反腐敗〉を掲げてきた習近平は、『パナマ文書』の封じ込めに躍起です。なにせ文書には“チャイナ・セブン”、すなわち中央政治局常務委員7名のうち序列1位の習近平、5位の劉雲山、7位の張高麗と、最高指導部3名の親族が名を連ねているのですが、メディアがこれをまったく報じないばかりか、中国国内からインターネットで〈巴拿馬(パナマ)文件〉などと検索してみても、中国人の名が一切出てこないよう規制されているのです」(国際部記者)

 パナマの法律事務所から流出した1150万点という膨大な文書が指し示す「資産隠し」リストに、最も多く登場するのは中国人。だが、ネットはかくのごとき有様、政府の定例会見では記者からの関連質問に答えず、リークを批難するオンライン記事でさえ削除、現地で放送されていたNHKのニュース番組は関連報道にさしかかると中断……と〈知らしむべからず〉が徹底されているようなのだ。

「そうは言っても隠しきれるものではありませんよ」

 とは、東京福祉大学国際交流センター長の遠藤誉氏。

「中国のネット検閲システムは万里の長城をもじってGreat Firewall、〈万里の防火壁〉と呼ばれていますが、最近では質のよい“壁越えソフト”が多数登場し、海外情報にアクセスするのも容易になっています」

 やはり厳しく情報が統制された1989年の天安門事件の頃とは違い、沈黙こそ保たざるを得ないものの、知識層は正確な情報を手にできるようだ。では、習近平は何を恐れているのか。

「彼が最も国民に知られたくないのは、いかに多くの現役あるいは旧指導層たちが海外に資産を移しているか、ということでしょう。中国には未来がない、と彼らが見なしていることと同義ですから」(同)

 英語にも日本語にもある「壁に耳あり」という諺は、中国語にはないのだろうか。

週刊新潮 2016年4月28日号掲載