卓球世界女王を破った15歳 伊藤美誠にはまだまだ伸びしろがある

スポーツ週刊新潮 2016年4月28日号掲載

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 身長150センチで、世界ランキング10位の伊藤美誠(みま)が、自分より20センチ以上も背が高い、世界2位で昨年の世界選手権の覇者に、丁寧に球を打ち返した。今月14日、香港で行われていたリオ五輪アジア予選2日目でのこと。結果、王者を4対2で破ってしまったのである。

無邪気な笑顔も人気

 伊藤が丁寧に球を打ち返した相手が、丁寧(25)という名だからややこしいが、それはともかく、

「丁寧は大柄で手足も長く、パワーがある反面、体の近くでは打ちにくくなる。そこで伊藤は、丁寧の胸元を徹底して突きました。パワー対決だと勝てる見込みがないので、相手が打ちにくいところを狙っていったのです。これまで4戦して4敗だったので、敗因をよく見つめ、作戦を変えたのが成功したのでしょう」(スポーツ紙記者)

 むろん、日本にも世界ランキングで上位の選手はいる。石川佳純(23)が4位で、福原愛(27)が6位につけているが、

「大事な試合で中国のトップ選手を破ることは稀で、善戦しても勝つまではいきません。世界4位の石川でも、1位から3位までの中国人選手の実力とは、雲泥の差があるのです」

 そう語るのはジャーナリストの青柳雄介氏。だから、中国のトップ選手は日本人選手と闘っても、まず本気にならないそうだが、

「伊藤美誠は中国人選手を本気にさせます。その証拠に、伊藤と対戦するときに限って、第1セットから1点とるたびに、雄叫びをあげたり、ガッツポーズを取ったりするのです」(同)

伊藤美誠(15)

■金メダルも

 中国のトップ選手が一目置く初めての日本人選手。そんな伊藤の特徴を青柳氏に説明してもらうと、

「前陣で戦う前陣速攻型は福原愛のスタイルに似ていますが、伊藤は福原の弱点のフォアハンドが強く、そのうえバックハンドも強い。福原は相手の球をあえて跳ね返すスタイルで、相手の強い球は強く跳ね返すけれど、弱い球は弱くしか返せず、相手のチャンスボールにしてしまう。一方、伊藤はどんな球が来ても、さらに自分の力を加えて強く打ち返せます。また、コートから距離を取って多くドライブを使う本格派の石川とはスタイルが違います。でも、前陣に徹して戦う伊藤は、今までの本格派とは違う分、むしろ世界で勝ちやすいでしょう」

 となると、気になるのは今後の伸びしろである。

「福原も石川も、中国選手に接近してきていると言われながら、肩を並べるところまでもいかない。その点、伊藤は中国の選手と戦って、負けたときでも互角の戦いができています。リオ五輪は団体戦要員ですが、今後、世界選手権と五輪のどちらかで銅メダルは確実に獲るでしょう。五輪のシングルスでメダルを獲る最初の日本人選手になるのでは。今後の4年間の伸び方次第では、金メダルも十分ありうると思います」

 先が楽しみなのは言うまでもないが、では、稼ぎの“伸びしろ”はいかに。卓球協会関係者に聞くと、

「卓球選手の実入りは基本的に、大会の賞金と、スポンサーやCM契約での収入になります。伊藤は今のところ、ニッタクという卓球用品メーカーと、シューズではミズノと契約しました。福原や石川の収入は数千万円程度といわれ、福原は1億円を超えていたときがあるかもしれません。伊藤は福原以上に稼げる可能性が、十分にあるのではないでしょうか」

 母子家庭で、母親の特訓の下で成長した伊藤。恩返しは十分にできそうだ。

「ワイド特集 浮世にも活断層」より