必見!「塾代は中学から私立が安い」「小学校受験の3パターン」 〈子供に最良な受験時期は? 悩める親への完全ガイド(3)〉

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 最終回となる今回のテーマは「小学校受験」。育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が案内する“お受験”事情とは。学習塾の費用、私立・国立大学の学費など、気になる「お金の話」も解説!

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学習塾の費用、私立・国立大学の学費など、気になる「お金の話」

 表2を見てほしい。全国の小学生のうち国立または私立の小学校に通っているのは1・79%。これがほぼ小学校受験をした子供の割合だと考えられる。いわゆる「お受験」層は全国で2%にも満たないということだ。この割合が一番高いのは奈良県。2位が東京の4・93%である。


 お受験をして私立大学附属小学校に入れれば、その後は受験なしに大学まで行けてしまう。しかし、地域に大学まで通ってもいいと思える学校があり、かつ金銭的な余裕がある家庭に限られる選択肢である。

【表2】生徒数の割合(抜粋)

 リーマンショックのときには途中で私立小をやめなければいけなくなり、ひっそりと公立に転校した子供もいた。アベノミクスに陰りが見え始め、株価が不安定な昨今、私立小お受験という選択は多くの人にとって高嶺の花かもしれない。

■「中学校から私立」のほうが安上がり

【表3】子供の学習費

 ここでお金の話をしておこう。文科省の「子供の学習費調査」(平成26年度)によれば、幼稚園から高校まですべて公立に通った場合の学習費総額は約530万円。すべて私立の場合は約1770万円。3倍以上の差が開く(表3)。

 額がかさむのは学校教育費。ちなみに学習塾の費用は、意外なことに「中学校から私立」のほうが「高校から私立」よりも安上がりになっている。私立中学校に通う生徒が年間約13万5000円なのに対し、公立中学校だと年間約20万5000円かかるのだ。

 小学生時代、中学受験のために塾に通ったとしても、その結果、中高一貫校に入学できれば、大学受験前までは必ずしも塾に行かなくてもいいし、塾要らずで大学受験に臨む私立高校生も多い。さらに大学附属校であれば通塾しなくても大学に進学できる。一方で、公立中学に通って高校受験をする場合は、とくに進学校を希望するなら塾での対策がほぼ不可欠になる。


 さらに表4のように、国公立大学に進めれば学費は4年間で約270万円。一方、私立大学なら4年間で約530万円が必要だ。

【表4】大学学部(昼間部)の1年間の学費

■小学校受験の“パターン”

 話を小学校受験に戻そう。大きく3つのパターンに分けることができる。

 1つは超ブランド私立大学の附属小に入り、大学までエスカレーターで受験要らずのパターン。首都圏でいえば、慶應幼稚舎、青山学院、聖心女子学院などが人気だ。小学校から、公立では考えられないハイレベルな教育が受けられ、一切受験に邪魔されない究極のゆとり教育を享受できるが、受験を知らずに大人になってしまう可能性が高い。それは本来悪いことではないが、厳しい受験競争を勝ち抜いてきた人たちと一緒になったときに、互いに違和感を覚えてしまうことがあるかもしれない。

 ただ最近は、大学で「外に出る」ケースも増えている。白百合学園、東洋英和女学院などは大学附属ではあるけれど、進学校として有名だ。また東京のお受験の超人気校、雙葉には大学がないので、必然的に大学受験が待っている。

慶應義塾幼稚舎

 2つめは国公立大の附属小学校という選択。これは教員養成系の大学に臨床研究の場として附属しているケースが多い。東京なら筑波大附属、お茶の水女子大附属、学芸大附属などが有名。各地方にもある。

 ただし、これらは完全な一貫校ではない場合が多い。附属の中学や高校があっても、成績によっては内部進学できないことも多い。またお茶の水女子大附属小は共学だが、高校から女子校になるので、男子は外部の高校か中学を受験しなければならない。それでも人気なのは、公立の小学校と同様に学費の自己負担がほとんどなく、私立に負けないレベルの高い教育を受けられるからである。

 3つめは東京など一部地域で見られる特殊なパターン。中学受験をすることを前提に、1のパターンのような超ブランド校ではない私立小に進むという選択だ。1つめ、2つめに比べて入試の難易度は低いことが多い。「それなら公立の小学校でいいのでは?」と思うかもしれないが、地元の公立小が荒れている場合や、どうしても公立が嫌な場合などに選ばれる。

 こうして中学受験で大学附属でない中学校に進むと、小学校、中学校、大学と高校以外のすべての受験を経験することになる。

■入れたところが最高の学校

 子供の進路で悩む親御さんは多い。しかし地域的にも経済的にも子供の能力的にも、迷えるほど選択肢があるというのは、とても恵まれていることだ。ただし受験は、いくら努力しても報われない場合もある。どんな進路に決まっても、わが子にとって最高だと思うことが大事である。親がそう思っていれば、子供も自分の前に開けたのがどんな道であれ堂々と歩んでゆける。入れたところが最高の学校なのだ。

 人生における選択の善し悪しは、決断したときの情報量や判断力ではなく、その後の努力で決まる。それがセンター試験の選択問題と違う。仮にどんなに不利な選択肢を選ぶことになっても、努力さえすれば、あとからそれを最善のものに変えられる。それが人生ではないだろうか。

「特別読物 子供に最良な受験時期は小? 中? 高? 悩める親への完全ガイド――おおたとしまさ(育児・教育ジャーナリスト)」より

おおたとしまさ
1973年東京生まれ。麻布中高卒、東京外国語大中退、上智大卒。リクルートから独立後、教育誌等のデスクや監修を歴任。中高教員免許、私立小での教員経験もある。『ルポ塾歴社会』など著書多数。

週刊新潮 2016年4月14日号掲載

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