老害・森喜朗が中日新聞を恫喝「オリンピックを批判する新聞とは契約しない」

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 またしても「ミスター老害」森喜朗元総理(78)が、とんでもないことをやってくれた。4年半後に迫った東京オリンピックのスポンサー契約を巡って、信じがたい暴論を振りかざして中日新聞を恫喝したのである。その横暴、無反省ぶりには、もはや溜息しか出ない。

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 たるんだ顔の皮膚に筋ばった首。白く、薄くなった頭髪。時折、落ち着きなく泳ぐ目線。テレビの画面に映し出されたその姿は、彼の体の隅々にまで、老いがひたひたと侵食しつつあることを如実に示していた。

「ミスター老害」森喜朗元総理

 4月2日、BS朝日の番組に登場した森喜朗・五輪組織委会長。がん闘病を続ける自身の体調に不安があるのか、会長職について、

「もう1年でも2年でもいい。毎日毎日全力投球する。(2020年まで)頑張りたい気持ちはあるが、そういう大層なことは考えない」

 と述べるなど、珍しく弱気な面も見せたのだが、そこはさすがに「ミスター老害」である。新国立競技場の建設計画見直し騒動などについては、全ての責任をマスコミに転嫁。そればかりか、自らがマスコミ報道の被害者であるかのような主張を繰り返したのだ。さらに、こんな話も――。

週刊新潮なんて、俺の悪口ばっかり言ってるじゃん。これはね、意図があるんですよ。私を落とそうとしている勢力があるんです」

 何やら陰謀論めいた考えを開陳なされたのだが、森氏を「落とそうとしている勢力」が存在するのは事実である。言うまでもなくその勢力とは、これまでの彼の言動にうんざりしている約1億人の国民のことだ。

 そんな森氏が先月末、BSフジの番組に出演した際に触れたのが、五輪の大会運営費について。これまで約3000億円と見積もっていたが、約5000億円に膨らむ可能性があることを明らかにしたのである。運営費の大部分はスポンサー収入によって賄われる予定で、森氏の大嫌いなマスコミもその一翼を担うことになっている。そして、ある新聞社とのスポンサー契約交渉の最中、森氏は信じがたい暴論を振りかざしたのだが、その詳細に触れる前に、五輪組織委と新聞社のスポンサー契約についてざっと説明しておきたい。

「そもそも、五輪のスポンサーを巡っては当初、読売新聞1社が独占して契約を結ぶ予定になっていました。その協賛金の額は40億円とも50億円とも言われていましたが、他の新聞社から“自国開催なのに1社独占は良くない”との声が上がった。で、他社も参加することになったのです」(全国紙幹部)

 手元にある内部資料によると、組織委と新聞社とのスポンサー契約は、A、B-1、B-2、Cという4つのカテゴリーに分かれている。最上位のAカテゴリーの協賛金額は1社あたり15億円。1月22日、組織委は読売新聞東京本社、朝日新聞社、毎日新聞社、日経新聞社と「オフィシャルパートナー契約」を締結したことを発表したが、これら4社はいずれもAカテゴリーでの契約である。

「Aカテゴリーで契約した場合、オフィシャルパートナーやオフィシャルサポーターといった呼称使用権、エンブレムやマスコットといったマーク類の使用権の他、オリンピック関連素材の使用権など、幅広く使用権が認められる。一方、1ランク落ちるB-1カテゴリーの場合、認められる使用権はAカテゴリーのほんの一部です」(同)

 組織委がB-1カテゴリーでの契約を目指して交渉を続けてきたうちの1社が、中日新聞社。同社こそ、森氏から恫喝された当事者である。

 中日新聞関係者が語る。

「今年2月、そろそろ正式に契約を結ぶという段になって、森さんは電通を通じてこんなことを言ってきたのです。“中日新聞社のうち、東京新聞は国立競技場問題などを批判的に書いていてケシカラン。組織委としては、五輪に批判的な東京新聞は外して、中日新聞とだけ契約したい”と」

 どのような形であれ、五輪を批判する新聞社にはスポンサーになる資格はない。そんな暴論を突きつけられたわけだが、

「この話は、すぐに中日新聞社の小出宣昭社長のところまで上げられました。そして、小出社長を始めとする中日新聞上層部が“森会長は何を考えているのか。報道の自由とスポンサー契約は関係ないじゃないか”と大反発したのは言うまでもありません」(同)

 組織委の武藤敏郎事務総長が中日新聞の東京本社を訪れたのは、3月半ば以降のこと。中日側は、大島宇一郎・東京本社代表が応対したという。

武藤敏郎事務総長

「そこで武藤さんが求めてきたのは、森会長と小出社長のトップ会談をやって欲しい、ということ。しかしその場でも武藤さんは、森さんの考えを代弁するかのように“スポンサーが五輪を批判するのはおかしい”と発言したのです。もちろんこの話も小出社長のところに上げられた。社長は激怒し、“スポンサーからの撤退も考えている”と組織委側に通告したと聞いています」(同)

■「確かにありました」

 森氏の恫喝発言について、中日新聞の小出社長に聞いてみると、

「はいはい。そのような問題は確かにありました。間接的にそういう話(森氏の発言)を聞きました」

 そうお認めになるのだが、一方の組織委は、

「現在、(中日新聞社とは)スポンサー契約交渉中であり、内容については公表できません」

 と言い逃れる。また、スポンサー契約と報道の自由の関係について森氏に尋ねたところ、代理人を通じてこう回答してきた。

「五輪スポンサー契約と報道の自由は別物です。もっとも、人権とは、本来、対国家防御権であるところ、組織委は、国家権力とは無関係ではあります」

 この回答の裏には、組織委は国家権力ではないので新聞を恫喝しても問題はない、といった本音が隠されているようだが、いずれにせよ、森氏が全く反省していないのは間違いなかろう。

 上智大学文学部新聞学科の田島泰彦教授が言う。

「森さんが“批判するならスポンサーにさせないぞ”と言ったのが事実なら、とんでもない話。権力の横暴としか言いようがない」

 東京五輪成功のための最大の障壁が「自分」であることに、森氏が気付くのはいつの日か――。

「特集 『オリンピックを批判する新聞とは契約しない』 中日新聞を恫喝した『森喜朗』の横暴・老害・無反省」より

週刊新潮 2016年4月14日号掲載

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