オランダは犯罪者減少で「刑務所職員」に失業危機

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 世に犯罪なかりせば――警察は不要、検察も無用、裁判所も要らず、刑務所は廃止。夢のようだが、現に「犯罪が減ったから刑務所を減らす」と宣言した国がある。オランダである。

「3月21日、オランダ法務省は犯罪件数が今後5年、毎年0・9%ずつ減少する見込みと発表しました。1万3500ある刑務所の房は現在すでに3分の1が“空室”、これは刑務所5カ所分に相当します」(現地記者)

 オランダと言えば飾り窓、売春も大麻も合法で治安がことさらよいと思えないが、実刑判決が減少したとして政府は2013年、85ある刑務所のうち19を18年までに閉鎖予定とした。目標に近づき何よりだが、刑務所職員にしてみれば、失業が現実味を帯びてきたわけだ。

「“空室対策”としてオランダは、ベルギーやノルウェーと“賃貸契約”を結び、両国の受刑者を受け入れていますが、“空き部屋”は増加の一途です」(同)

 受刑者が入るのは基本的に個室、テレビがあり、教育目的ならパソコンも使えると好待遇。現地在住のライター、稲葉霞織氏は言う。

「刑務所職員の知人によれば刑務所を減らす目的は歳出削減。監房はホテル並みで出て行きたがらない者も多いですが、08年以降、オランダは財政赤字。犯罪が減ったといっても僅かでしょう、実感はないです」

 高齢化で凶悪犯罪は減り、法の適用は寛容化。精神科病院や更生施設に収容されるケースが増え、当然、受刑者数は減るが、国民からの批判は根強い……と、実は夢のない話なのだという。

週刊新潮 2016年4月7日号掲載

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