月刊誌「WiLL」名物編集長がクビになった無謀な移籍に業界ビックリ!

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〈ひさかたの 光のどけき春の日に しづ心なく 花の散るらむ〉(紀友則)

 麗らかな陽射しに心ざわめかせるのは桜だけでなく、目下、出版業界が騒然となりそうな事態が進んでいる。10年以上にわたり月刊誌「WiLL」(ワック社)の編集長を務めてきた、あの花田紀凱(かずよし)氏(73)が、無謀な独立話を推し進めた結果、解任されたのだ。

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花田紀凱氏(73)

 花田氏といえば、業界最年長の名物編集者である。88年に「週刊文春」の編集長に就任すると、東京・綾瀬の女子高生コンクリート詰め殺人事件で加害少年の実名報道に踏み切るなど、タカ派スキャンダリズムを掲げて活躍。部数5割アップを達成した。94年には月刊誌「マルコポーロ」編集長に就任。が、翌年ホロコーストを否定する記事を掲載し、雑誌は廃刊に。その翌年退社し、かつての“天敵”朝日新聞社や角川書店を経て、04年から現職にある。

「一貫して保守論陣を張るWiLLは、雑誌不況の時代にあって刷り部数は10万部前後を維持。朝日批判の号など、主要書店での売上は『文藝春秋』を上回る時もあります」(出版業界関係者)

 そんな敏腕が、さる2月26日の産経新聞で、3月に退社して部員ともども飛鳥新社へ移籍すると報じられた。つまり雑誌はそのまま、別の出版社に引越しというのだが、雑誌コードや商標権を持ち出すまでもなく、およそ不可能な芸当だ。だから、

「あの花田さんが一体全体どうしちゃったのと、業界は噂でもちきりでした」(同)

■気になる新雑誌名

 そして18日の臨時株主総会で取締役を解任されてしまう。むろん編集長職も解かれ、すでに後任の体制が整っているという。ワックの代理人である野中信敬弁護士が言う。

「取締役は会社に対して善管注意義務を負い、また会社の承認なくして、市場において競合する事業を行うことは禁じられています。花田さんの振舞いは、これら複数の法的義務に違反するもので、どこから訴えようかと悩んでしまうほど違法行為のオンパレードです」

 だが、花田氏曰く、

「ワックで社長よりも年上なのは僕だけ。一昨年、社長が体調を崩して以来、『先々のことを考え、経営のわかる人を連れてきた方がいい』と言ってきました。それが嫌だったのかもしれませんが、昨年8月、社長から『花田さんは私のストレスになっている。部員を連れて4月までに別の会社に移ってください。12月までに決まらなかったら、年明けに私が決めます』と言われました。そこで飛鳥新社さんに相談したのです」

 にわかに信じがたい説明だが、一方のワック関係者は、

「社長が年齢も考慮して花田さんに『一線を退いて編集主幹の肩書では』と打診したところ、あくまで現場にこだわる彼が怒り出してしまった結果、こうなったのです。なぜか彼はWiLLを編集部ごと貰えると思い違いし、飛鳥新社と交渉を進めてしまった」

 再び花田氏に問うと、

「11年間苦労してきて、自ら移る理由なんてありません。出来ればワックで仕事を全うしたかった。僕に最後の編集長の場を与えてくれたのは社長で、今も感謝しています。新雑誌名については、現段階では『協議中』としか言えません」

 とはいえ、

「飛鳥新社にはWiLL編集部の内線一覧表が作られ、花田さんの新しい名刺の版下には『NEW WiLL』編集長と刷られていたのだから、本気で雑誌ごと移籍しようとしていたのです」(前出ワック関係者)

 桜の花弁のように脆くて儚い人の世である。

「ワイド特集 さまざまの事おもひ出す桜かな」より

週刊新潮 2016年3月31日号掲載

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