福島第一原発を視察した「田原総一朗」(4)“東電はダメだ、だけどあんたは信用する。これが大事ですね”

社会週刊新潮 2016年3月17日号掲載

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 福島第一原発の事故から5年が経とうという今年3月1日、ジャーナリストの田原総一朗氏(81)が初めて現地に足を運び、座談会を行った。メンバーは澤田哲生・東京工業大学助教授(原子核工学)、増田尚宏氏(東京電力・福島第一廃炉カンパニープレジデント)、そして石崎芳行氏(東京電力副社長・福島復興本社代表)。最終回の本稿では、この日見た「東京電力の社員」について田原氏は語った。

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福島第一原発の1号機と2号機

【澤田】 これから喫緊の重要なポイントは何でしょう。

【増田】 デブリ燃料の位置を特定して取り出す作業においては、被曝の問題を考えないといけません。作業をする人たちの被曝はどうしても生じますが、彼らが仕事を辞めれば、地元の方々に与えるリスクは下がらない。誰も経験のない仕事が増えていく中、必ず判断を迫られる難しい問題です。

【田原】 7000人を超える従業員、特に東電の社員ではない人たちに、いかにやる気を持たせるかですよ。

【澤田】 従業員の顔を出したポスターは、いいですね。

【増田】 最初は会社名や名前にマスキングしたり、顔が写らない角度で撮ったりしていましたが、最近は撮ってくれと言っていただく方が増えて、嬉しいです。

【田原】 顔を出すことをオーケーしたということは、自分の仕事にプライドを持っている。大事なことです。

■日本の企業の体質

構内のタンクの横を通る田原氏と澤田氏

【澤田】 地域復興ということでは、次は何をやろうと思っていますか。

【石崎】 避難指示解除になった楢葉町には、まだ400人ほどしか戻られていませんが、戻った一軒一軒に見回り隊と称して社員を行かせています。そういうきめ細かいふれあいに、制服を着て行かせています。最初、社員はみな“このヤロウ”って言われるんじゃないかって、制服着るのを嫌がったんですよ。でも最近、住民の皆さんから“東電は絶対許さないけど、東電のあんたは来てくれ”と言われるようになってきました。

【田原】 東電はダメだ、だけどあんたは信用する。これが大事ですね。

燃料が取り出された4号機

【石崎】 福島に来た東電の社員は、延べ22万人を超しました。全社員が3万3000人ですから、全員が数回は来ています。でも、廃炉でまたトラブルでもあれば、やはり住民の方の不安が高まってしまいます。

【澤田】 とはいえ、トラブルをゼロにはできません。

【増田】 起こったことをわかりやすく、タイムリーにお知らせするのが大事だと思いますが、そこがなかなかうまくできていなかった点は、あるかと思います。

【田原】 日本の企業の体質には、都合の悪いことはいかに知らせないかというのがあるんですよ。だけど事故を起こしたからには、いかに都合の悪いことも知らせるかって、価値観を変えないといけない。ただ、東電の社員たちが数回ずつ福島に来て、地域を歩いているわけでしょ。信頼されているのは大きいと思うな。

【澤田】 では、トリチウム水の問題も何とかなりますか。

【田原】 信頼されるかどうかですね、結局。それと現場を見て、僕は、作業員たちがプライドを持っていると思った。目つきがそうだった。歩き方も。みな颯爽と歩いているんですよ。

前線基地・Jヴィレッジにて会談。左から石崎芳行氏、増田尚宏氏、田原総一朗氏、澤田哲生氏

「特集 原子力の専門学者座談会 御用学者と呼ばれて 特別篇 福島第一原発を視察した『田原総一朗』」より