八角理事長 協会私物化の全容 時給2万円で雇った女性会計士は“会員権停止処分”の前歴

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 東京地検特捜部副部長、東京地検特捜部長、名古屋高検検事長を経て、2012年から現在に至るまで相撲協会の外部理事を務めている宗像紀夫氏(74)が、八角理事長による“協会私物化”の懸念を明かす。今年1月に行われた評議員会では、退任する山響親方の後任に、八角親方が自らの息のかかった年寄OBを押し込もうとした。元年寄が評議員になるには年寄総会での承認が必要、とのルールを無視した行動で、貴乃花親方が「おかしいじゃないですか」と詰め寄る騒ぎにもなった。

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両国国技館

 この事実が本誌(「週刊新潮」)の報道によって明らかになり、1月28日に行われた年寄総会は紛糾。「変じゃないか」「理事長おかしいぞ」という怒号が飛び交い、説明を求める声が相次いだが、当の八角親方は「記憶がない」などと言うのみ。それを受け、年寄たちからは「辞任しろ!」との厳しい声も上がった。

 しかし、年寄総会でさんざん糾弾された八角親方はそれでも懲りなかったようである。同日、年寄総会に続いて行われた理事会で、次のような挙に出ていたのである。

「八角さんは急に“顧問弁護士をこういう方にお願いしたい”と言い出したのです。そんな話は事前に通告された議題には入っていませんでしたが、それよりも問題なのは、この時点ですでにその弁護士との契約を済ませていたことです。つまり、理事会に諮る前に勝手に契約していたのです」(相撲協会関係者)

八角親方

■「誰の知り合いですか?」「いや、私です」

「八角さんが勝手に決めた事案を理事会に押し付けるような格好になっており、由々しき事態だと思います。

 そもそも、相撲協会では、反社会勢力の問題に強い弁護士事務所に顧問をお願いしており、そこには弁護士が10人以上もいる。だから、新しい弁護士と顧問契約を交わす必要などないはずなのです。

 新たに協会で弁護士を必要とする事態が生じたのであれば、その必要性を理事会で説明しなければなりません。今の弁護士事務所だけでは手が足らない、とか、専門分野の違う弁護士が必要になった、とか。そうした説明があれば納得できるのですが、一切それがなくて、いきなり、『この方にお願いしたい』と言ってきたわけです。

『何が専門なんですか、その人は?』

 貴乃花さんがそう質問していましたが、本来、理事たるものは皆がそうやって確認すべきです。しかし、他の理事からは説明を求める声が上がらないので、私が質問しました。

『誰の知り合いですか?』

 すると八角さんは、

『いや、私です』

 と、“自白”したというか、認めていました。

 こんなことが罷り通るようであれば、自分の知り合い、一族郎党全部連れてきていいということになってしまう。そうなればまさしく協会の私物化で、公益財団法人の運営方法として極めて不適切です」(宗像氏)

■独断で決まった高報酬の契約

 この理事会では、別の事実も明らかにされた。八角親方は弁護士だけではなく、新たに女性公認会計士とも業務委託契約を交わしていたのだ。この契約も事前に理事会に諮られることなく、八角親方の独断で行われた。

「理事会で、八角さんは“決算を手伝ってもらうため、3月末まで仕事をしてもらう”と言っていましたが、実際には、その会計士とは今年1月からの1年契約になっているそうです。八角さんは理事会で嘘をついたことになります」(先の協会関係者)

「公認会計士についても、顧問弁護士の問題と同様で、そもそも、協会には、何かあればいつでも手伝ってくれる公認会計士が3人もいるのです。新しい会計士を雇わなければいけない理由があるとは思えません」(宗像氏)

 理事会に諮ることなく勝手に弁護士、公認会計士と契約した八角親方。実は、問題はそれに留まらない。契約の内容に対しても不審の声が上がっているのだ。

「八角さんの独断で新たに顧問になった弁護士に対しては、月額10万円の顧問料の他、時給3万円の給料が支払われる契約になっている。公認会計士は時給2万円。で、報酬があまりに高すぎる、という声が協会内部で上がっているのです」

 と、先の協会関係者。

「しかも、協会の資産について、北の湖さんの時代には、メガバンクの社債などで手堅く運用することになっていたのに、八角さんはそれを変更し、銀行預金として預けている。つまり、資金を外に流しやすい状況にある、ということです」

 また、女性公認会計士については別の問題も。

「彼女、3年前に日本公認会計士協会から、1カ月の会員権停止という重い処分を受けているのです。なぜそのような問題会計士と契約を結んだのでしょうか」(同)

 新たに契約した顧問弁護士と公認会計士について相撲協会に取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。

昨年11月に急逝した北の湖前理事長

■北の湖さんの時代には……

「今回の相撲協会のケースがそれにあたるかどうかは分かりませんが、もし、雇う必要もないのに自分の知り合いを雇い、そこに協会が損害を被るような形で資金が流れていれば、これは『背任的行為』になります。しかも、相撲協会は民間企業ではなく、公益財団法人。尚更財産はきちんと管理されなければなりません。

 私はこれまで4年間、相撲協会を見てきましたが、八角さんが理事長になってからの協会運営の乱暴さは目に余るものがある。八角さんは、未だに相撲界の古いしきたりの中での考えのままなのです。しかし、公益性を持った、開かれた協会においてそれは通用しない。北の湖さんの時代には、こんなことは絶対にあり得なかった。あの人は本当に高潔な人でしたから……」(宗像氏)

「特集 殺害予告の電話があった『相撲協会』理事長選挙の大暗闘 『八角理事長に告ぐ 相撲協会の私物化を止めよ』――宗像紀夫(日本相撲協会外部理事)」より

週刊新潮 2016年3月17日号掲載

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