続報が消えた台湾「聖徳太子“旧札”」持ち込み事件

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 旅の途上で面倒に巻き込まれるのはご免だが、この男、いささか大胆すぎた。

 舞台は台湾の空の玄関口・桃園国際空港。2月19日、マニラ行きの便に搭乗しようとした48歳のわが同胞が、税関に拘束されたのだ。手荷物の中に大量の現金があることがX線検査で判明。現地では1万ドル(約112万円)以上の外貨の現金を持ち出す際は申告が必要だが、その手続きを怠っていたのである。

「件の男性は、1984年に福澤諭吉に切り替えられる前の聖徳太子の肖像が描かれた旧1万円札を1億1900万円分も所持。規程により没収されました。本物なら開港以来最高の没収額です」(外報部記者)

 この男は、“預かったもので、フィリピンで価値を鑑定して貰う予定だった”と申し開きをしているという。

 で、日本の新聞、TVもこぞってこの一件を紹介したが、続報はナシ。代わって現地に詳しいジャーナリストがこんな解説を披露する。

「台湾四大紙の1つ『聯合報』は、没収当日に、台湾の日本大使館にあたる交流協会が偽物ではないかとの見解を示したと報じました。日本の警察の鑑定を待っている状況です」

 判れば一件落着かと言えば、さらに厄介な事態になると話すのは社会部記者だ。

「日本では、1年前、中国で偽造された旧1万円札を銀行で両替した男らが捕まる事件がありましてね。4年前も、聖徳太子の偽札を郵貯に預けたグループが逮捕され、入手先について“台湾軍が保管していたもの”と供述しましたが、アジアではこの種の偽札が流通し、詐欺事件の温床になっているんです」

 偽札ならば、台湾では通貨偽造の罪に問われ、本物でも外貨管理法違反となる。誰よりも法を重んじた聖徳太子を、欲に任せて弄んだ罪は重い――。

週刊新潮 2016年3月3日号掲載

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