今は猫を被っているバリバリ独立派が「台湾総統」になる!

国際 週刊新潮 2016年1月28日号掲載

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 政権交代など起こり得ない対岸の大国からすれば、健全な選挙も“不道徳な反逆”と映るのだろう。16日、台湾で総統選が投開票され、独立志向の民進党・蔡英文主席(59)が当選した。対中融和を進める国民党から8年ぶりに政権を奪還した学者肌の新総統は、並々ならぬ闘志を燃やしているという。

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 台湾駐在の特派員が言う。

「前回の総統選で惜敗した蔡主席は、今回は得票率56%を獲得。対立候補である国民党の朱立倫主席に300万票以上の大差をつけて圧勝しました」

 中国から逃れた国民党政権が支配してきた台湾は、87年まで戒厳令下にあった。が、民主化の声が高まり、その前年、民進党が結党。89年に合法化され、96年には初の総統直接選挙で、国民党の李登輝氏が当選した。

「法学者の彼女は李政権のブレーンとして、中台を別の国と位置付ける『二国論』の起草に携わります。00年からの民進党・陳水扁政権でも対中政策担当大臣に抜擢され、04年には民進党から出馬、立法院(国会)議員に初当選しました」(同)

 昨年は中台分断後66年目にして初めて両首脳が会談するなど、融和に大きく傾いた。その流れは5月の総統就任後に少なからず押し戻されると見られているものの、さしあたり蔡主席は中台関係について、

〈現状維持に尽力する〉

 と、当選会見で表明。が、そつのない振舞いの一方、根は筋金入りの「台湾独立論者」なのである。

■声を荒らげて…

 その“闘志”を目の当たりにした、国際関係学研究所の天川由記子所長が言う。

「陳水扁政権が2期目に入ろうとしていた頃です。総統は新憲法制定の意向を明らかにしており、これに中国が激怒、武力行使をほのめかしてきたのです。驚いた米国は、何とか総統を踏み止まらせようと高官を訪台させ、同時に『日本からも説得してほしい』と要請してきた。当時、福田康夫官房長官のアシスタントをしていた私も、現地に向かいました」

 その時、知人を介して会ったのが蔡氏だった。

「対中担当の大臣だった彼女の事務所を訪ね、2人きりで英語で話しました。非常に厳しい表情で『Why canʼt we become independent?』と質すので、私は日米両政府の見解だと断った上で、『大変な事態になりかねない。中国もいずれ民主化に移行するだろうから、その時に独立のチャンスが訪れるでしょう。今は待つべきです』と応えたのです」

 が、蔡氏は即座に、

「『As soon as!』と、声を荒らげました。リアリストで、中国を刺激すれば選挙にも響くと分かっている人。今は牙を隠していますが、あれだけ強い信念を胸の奥にしまっておけるとは思えません」

 ジャーナリストの高口康太氏も、こう言うのだ。

「元々民進党は党の綱領で独立を掲げており、今回は立法院選で113議席のうち68と、初めて過半数を占めました。憲法改正の規定を踏まえれば発議ができる状態で、議決も現実的といえます。支持者からの期待につき動かされた蔡主席が、あらためて独立に言及する可能性も十分あります」

 独身の新総統は、2匹の猫と同居しているという。自身は、いつまで猫を被っているのだろうか……。

「ワイド特集 炎上中に寒中見舞い」より