伊坂幸太郎氏が「この小説は世に出すべき」と大絶賛! 新潮ミステリー大賞に福島県生まれの41歳、一條次郎氏

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 1月28日東京新宿区の日本出版クラブにおいて、第二回新潮ミステリー大賞の授賞式が行われた。

 受賞作品は一條次郎氏の『レプリカたちの夜』。

『レプリカたちの夜』は、動物のレプリカ製造工場で働く主人公が、工場内で“動くシロクマ”を目撃し、シロクマの正体を探るうちに、次々と奇妙なことが起きはじめるという、ミステリーともファンタジーともとれる作品となっている。

 選考委員の伊坂幸太郎氏は同作を「読み進めるうちに登場人物たちに愛着を覚え、この小説をずっと読んでいたい気持ちにさせられました」と絶賛。「とにかくこの小説を世に出すべきだと思いました」と熱烈に支持したことが受賞への後押しとなった。

 また、選考委員の貴志祐介氏は「これをミステリーだと認めると、ミステリーはあらゆるジャンルの文学を包含することになるし、第二回でこれが大賞になったら、この賞の性格を変えてしまうのではという危惧もあった」と指摘しながらも「筆力には、目を瞠らせるものがあった。筒井康隆『脱走と追跡のサンバ』や町田康『宿屋めぐり』といった傑作が引き合いに出されるほどと言ったら、想像していただけるだろうか」と評した。

『レプリカたちの夜』で第二回新潮ミステリー大賞を受賞した一條次郎氏

 受賞者の一條次郎氏は、福島県生まれの41歳、山形大学人文学部卒業。上京した兄が残していった蔵書を読み、芥川龍之介、夏目漱石、太宰治に親しんだ。小説は10年程前から書き始め、文学賞に応募するようになる。授賞式では控えめな声で「受賞することができて嬉しいです。これからも頑張りたいと思います」と意欲を語った。

伊坂幸太郎氏

 授賞式で挨拶をした伊坂氏は、「この味を楽しむなら一條さんの本を読むしかないな、という作家になって欲しい」とエールを送った。

 一條氏の担当編集者の西山奈々子氏は受賞作の魅力をこう語る。「次々とシュールな出来事が起こっていくのですが、奇妙な登場人物や独特のリズムをもった文体にひかれて読み進めるうちに、この世界から抜け出せなくなります。思わずくすっとなるようなユーモアセンスも抜群。小説を読む楽しさを改めて味わえる作品です」。

 新潮ミステリー大賞は2014年に新設された、ストーリー性の豊かな広義のミステリー小説を対象とした文学賞。日本推理サスペンス大賞、新潮ミステリー倶楽部賞、ホラーサスペンス大賞の遺伝子を受け継ぐ新たな文学賞として創設されたものであり、伊坂幸太郎、貴志祐介、道尾秀介の各氏が選考委員を務めた。新潮社主催、後援は東映。事務局は映画化も検討する、としている。

□最終候補作品

「レプリカたちの夜」一條(現・一條次郎)
「卵の中」九頭竜正志
「宇宙の果てのフォークロア」黒澤主計
「歌姫の罪と罰」中村哲也
「僕らの時代とタイムカプセルアンサンブル」森下淳士

Book Bang編集部

2016年1月28日掲載

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