【「田中角栄」追憶の証言者】法廷で2回激昂した角栄の凄まじき眼力――堀田力(ロッキード事件担当元検事)

国内 政治 週刊新潮 2015年12月17日号掲載

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 6年9カ月に及んだロッキード事件の一審公判中、被告人席に座る田中はほとんど感情を表に出さなかったという。が、公判検事の1人だった堀田力氏(81)の言葉に、わずかに2回、我を忘れて激昂する姿を見せていた。

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田中角栄

「法廷での田中さんは、時折、真向いに座る私たちを見渡す時は無表情なままでした。冷たく無視する態度で、完全黙秘を押し通されましたね」

 と、堀田氏は約40年前の法廷闘争を振り返る。

「そんな田中さんが、顔を真っ赤にして怒り出したことがありました。私の言葉に反応して、それはもの凄い形相で睨みつけてきたんです。あんなことは2回きりなので、はっきり覚えているんです」

 田中がロッキード社から5億円を受け取ったとして、収賄と外為法違反の罪に問われた裁判は、1977年1月に始まった。

「公判開始から5年目の81年頃、私は裁判の休憩時間に弁護側と折衝し、あくまで5億円の受け取りを否定し続ける田中さんを牽制する意味で、“裁判所に田中さんの妻である、はなさんの証人尋問を申請するつもりだ”と伝えたことがありました。すると、弁護士の隣で聞いていた田中さんの顔はみるみる赤く染まり、まるで赤鬼のような物凄い怒りの形相に変わったのです。一言も発しませんでしたが、“家族は関係ない!”と言わんばかり。あの時、私は田中さんを本気で怒らせてしまったのでしょう」

 2度目は田中に懲役4年、追徴金5億円の実刑判決が下された判決公判を控えた、82年の暮れ頃だった。

「最後に私が被告人質問で、“田中さんは立派な政治家であり、自らの口で国民の前できちんと事実を語って説明すべきだ”と語りかけた時です。本人に教え諭すような言い方が気に障ったのか、前回と同じように顔を真っ赤にして物凄い眼力で睨みつけてきたのです」

 当時、田中は64歳、一方の堀田氏は48歳と一回り以上も年下。田中は“舐めるな若造!”とでも言いたかったのだろうか。

「とにかく全身から発せられる怒りのオーラは凄まじかった。眼光鋭いあの目に射すくめられたら陣笠議員はおろか、大臣だってぶっ飛んでしまうでしょう。私は未だに、他人からあそこまで強い怒りの念を向けられたことはありません」

 死してなお、田中は元鬼検事を畏怖させている。

「ワイド特集 再び振り返る毀誉褒貶の政治家の魅力的実像 二十三回忌『田中角栄』追憶の証言者」より