着工から2年で戸建てが建たない「トヨタホーム」トンデモ施工

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「お客様第一」「品質第一」。トヨタはこの理念を掲げて世界企業の礎を築いた。だが、そのグループの一角『トヨタホーム東京』は、施工を請け負った戸建て住宅を2年経っても完成させず、「お客様」と「品質」を巡って大揉めなのである。

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売上高は約200億円

 規模は違えど、以下も「杭打ち偽装」と同じ、建築を巡るトラブルである。

「着工から2年以上も経って、家が完成しないなんて想像しなかった。どん底に突き落とされた気持ちです」

 と嘆くのは、都内の会社役員の男性(43)だ。

 この役員氏は、2012年、湘南の海を見下ろす神奈川県藤沢市に住宅用地を購入。地上2階、地下1階の自宅兼事務所を計画し、トヨタホームに施工を依頼した。着工は13年8月、完成予定は12月。工事費は約7000万円だった。

「土地代なども含めると数億円規模になるマイホーム。現場へ顔を出して差し入れをするなどして、完成を心待ちにしていました」

 だが、その気持ちは、程なく裏切られることになる。

■嘘を白状

「11月になると、現場に誰も入っていない、なんてことが出てきた。現場は荒れ放題で、資材もむき出しのまま。結局、最初の工期は延長されたのです。その後も“あと○カ月で出来ます”“○月までには完成します”と言われるのですが、一度も守られたことはない。今に至るまで計6回も先延ばしされているのです」

「かんばん方式」で知られるように、トヨタの強さは、その緻密に練られた生産計画にある。が、この孫会社にはその精神は受け継がれていないようなのだ。

「工事自体も不手際のオンパレード。一番酷かったのは床を支えるALCという板材の一件です。あちこちが破損しているのがわかったので、交換をお願いした。後で確認したら“直しました”と言うのですが、違和感を持ち“どこを何枚交換したのか教えてほしい”と聞くと、“すみません、交換していませんでした”と白状した。嘘をついていたのですから許せないですよ」

 現在もこのALCを直した形跡はないという。

 これらトラブルを解決すべく、両者は、昨年11月から調停手続きへ。しかし、

「向こうはその中で、突如、私の求めに応じた工事の“追加料金”として、約2600万円を要求してきた。確かにいくつか工事をお願いしましたが、金額の説明などまったく受けていません。そんなやり方があるのか、と唖然としました」

 調停は不成立に終わる。すると先日、トヨタホームは、この追加代金などを巡って役員氏を提訴。これでは「お客様第一」の看板などどこかへ捨ててきてしまったように見えるのだ。

『トヨタホーム東京』は、

「訴訟を提起したため、お答えを控えます」

 しかし、建築家の碓井民朗氏によれば、

「この規模の地下つき住宅を4カ月間、7000万円で建てるのはとても無理。計画を立てた施工業者もはじめから間違っていた」

 危機管理コンサルタントの田中辰巳氏は言う。

「どちらが正しいかはともかく、裁判になること自体、社名に傷が付く。危機管理の失敗です。消費者側が非常に強くなってきた昨今、トヨタホームは、顧客とより向き合う体制を作る必要があると思います」

「世界のトヨタ」の冠に胡坐をかき、殿様商売――。そんな時代はもう過ぎ去ったということなのである。

「ワイド特集 ふとどき者ほどよく眠る」より

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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