人は120歳まで生きられるから還暦「ドクター南雲」3つの忠告

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■食べ物は「皮」を食え

 そもそも、動物は食事によって免疫機能を維持していますが、免疫物質であるサイトカインには血管を傷つけてしまう副作用がある。しかし「空腹時」には自動的にこれが補修される。それを促すのがアディポネクチンです。96年にヒトの脂肪組織の中から発見されましたが、血管を修復し、さらに拡張させ、血行を促進する作用がある。高血圧・動脈硬化の予防に効果を発揮する大事なホルモンです。

 先にも述べましたが、これらの物質や遺伝子は空腹の時にしか発現しません。お腹が「グーッ」と鳴るまで我慢するのは、最初のうちは少々辛く感じるかもしれませんが、「空腹に慣れる食生活」を作ることも大事です。

 食のリズムを作るうえでの基本は朝。起きて少しでも胃がもたれていたら朝飯を抜いてみる。もともと人には一日三食という決まりはない。暴飲暴食した次の日は、胃が軽くなるまで食事を抜くぐらいなら簡単でしょう。夜に、しっかり食べて必要な栄養とカロリーを摂ればいいのです。

 次に実践してもらいたいのは早寝早起き。読者のなかには「睡眠時間は7時間以上は必要」とか「早起きは無理」と思っている方もいるのではないでしょうか。しかし、睡眠において重要なのは時間ではなく「質」。何より、午後10時から午前2時までの4時間の「睡眠のゴールデンタイム」が大事なポイントです。

 睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2つの状態があることが知られていますが、ノンレム睡眠の間には成長ホルモンが分泌、脂肪が燃焼され、筋肉が作られる。これは、「たんぱく同化作用」と呼ばれています。

 そもそも人間は、朝日が眼に入ってくることで脳の松果体が刺激され、体内時計が働き出します。同時に交感神経が働き出し日中を活動的に過ごすことが出来る。そして約14時間経つと、副交感神経に切り替わる。つまり、心拍数や血圧が下がり「お休みモード」になるのです。早寝早起きはこのリズムにぴったり合っており、恒常的に成長ホルモンの分泌を促すことになるわけです。

 もっとも還暦まで働きづめだった人が、すぐに生活のリズムを変えるのは難しいかもしれません。そこで、推奨したいのは土日に楽しいイベントを作ることです。

 特に、釣りやゴルフなどで体がクタクタになるまで遊ぶのがいい。朝から昼寝もせずに遊び続ける。そして風呂を浴びて食事し、そのまま布団に入って寝る。疲れていますから、起きていられないはずです。すると、翌日も早く起きられる。大事なのは、そこで二度寝をせずに活動すること。週末に早起きのリズムを作るのです。

 ちなみに私はどうしているかというと、朝は3時に起きて、9時までメールチェックや執筆などに費やしています。毎日9時の始業まで6時間の自由な時間です。これは結構長い。好きなことが出来るので、この時間帯を「人生のボーナス」と呼んでいるほどです。コーヒーとタバコに頼って夜更かしするのと、どっちが長寿にいいか明白ではありませんか。

 そして3つ目にお伝えしたいのは、同じ食事にしても、これからは「皮」をもっと食べて欲しいということ。その理由は抗酸化作用です。野菜や果物の皮は外界とのバリアになっていて、紫外線による酸化を防ぐ機能がある。

 分かりやすいのはリンゴを剥くと、あっという間に茶色く変色しますが、皮は赤いままです。皮の持つ抗酸化作用が働いているからです。これは活性酸素の働きを抑えることを意味していますが、老化とはまさに「体の酸化」。ストレスや紫外線、喫煙や過度の飲酒などによって活性酸素が細胞を痛めつけるわけです。

 果物や野菜の皮を取り入れるということはしわやシミ、たるみといった肌の老化を防ぐことにつながる。この他にも皮には創傷治癒作用、抗菌作用もあると言われています。

 勿論、皮がいいからと言ってバナナやパイナップルの皮まで無理して食べる必要はありません。農薬も気になります。スーパーで野菜や果物を選ぶ際は出来る限り無農薬のものを。また、これを機にベランダで自家栽培をしてみるのも手でしょう。

 また、魚・動物の皮にも同様の効果が期待できます。例えば、魚の場合、皮に脂肪やコラーゲンが集中していますが、青魚には「オメガ3」と呼ばれる抗酸化物質を多く含んだ脂肪酸があります。海面すれすれのところを遊泳し太陽の光を浴びているので、抗酸化脂肪酸が蓄えられているのです。青魚なら「皮まで食べる」ということを常に意識しましょう。

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