起訴は決定で中国「スパイ裁判」はどう展開するのか?

中国週刊新潮 2015年10月15日神無月増大号掲載

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 悪法もまた法なり、とはよく言ったものである。目下、スパイ行為の疑いで逮捕された邦人2人を待ちうけるのは、中国の“悪法”による刑事裁判なのだ。すでに起訴が確実だという彼らの今後は、どうなるのか。

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 そもそも、今回の逮捕の背景には、中国の「反スパイ法」がある。

「容疑については発表されていませんが、昨年11月に制定した“反スパイ法”を適用したようです。習近平政権になってから、民族主義を煽り、共産党体制を脅かす存在を除去する姿勢が強まっていた。その一つが、西側諸国の外国人を取り締まること。こうした中で、『国家の安全を脅かす活動』がスパイ行為であると定めたのです」(外信部記者)

 中国事情に詳しいジャーナリストの高口康太氏が指摘する。

「中国では重要なことが何も書かれていない資料ですら国家機密とされています。今までも逮捕は可能でしたが、国内外の諜報活動を取り締まる法律が不完全でした。今回、取り締まりの大きな枠組みができ、国民の義務としてスパイ摘発に協力する、ということも定められました」

 さらには、

「スパイ行為の定義は曖昧で、拡大解釈することが可能。恣意的な運用が危惧されています」(先の記者)

 今まで以上に中国国内での外国人の拘束が頻発する恐れがあるのだ。とはいえ、2人はすでに囚われの身で、今後の現実を直視する以外にない。拓殖大学教授の富坂聰氏によれば、

「5月から今まで拘束しているということは、この期間で、ある程度の証拠固めを当局が行っているはずです。つまり、起訴される公算が非常に高く、当然、裁判になる。弁護士は用意できますが、中国人ですから、スパイ行為を働いた日本人の弁護を懸命にやるとはとても思えません」

 中国の刑事裁判は二審制で、原則公開という名目だが、当局が傍聴人を指定してしまうというのだからタチが悪い。では、判決が出るまでにはどのくらいの期間を要するのだろうか。産経新聞中国総局特派員の矢板明夫氏が言う。

「1996年に国家機密を入手したとして逮捕され、懲役8年の判決を受けた日本人は、逮捕から判決確定までに1年以上を要しています。数年かかることもある」

 実際の量刑については、

「仮にこの2名が、中国国外の諜報機関の一員として、計画的に情報を収集したと当局に認定されれば、スパイ罪の適用となります。最高刑は死刑ですが、これまでの中国では軍幹部や科学者が機密情報を漏洩したケースで適用されたくらい。今回の場合、死刑はないと思われますが、10年以上の懲役になる可能性があります。一方、組織的、計画的なものではないと認定されれば、国家機密探知罪として、懲役3年以上、10年以下の判決となるのがほとんどです」(同)

 黄河の濁流が澄むことなどない。無罪など夢のまた夢。

「特集 中国にノンプロ『007』を囚われた『公安調査庁』」より