「DV防止法」成立15年で急増した「冤罪DV」実態報告――西牟田靖(ノンフィクション作家)

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■“お父さんは怖い人”

 Dさん(自営業者・50代)夫妻のケースなどは、保護施設が妻の意思を無視して、DVをでっちあげてしまった例だ。

「不仲だった妻が、子ども3人を連れて出て行きました。相談人に次のように言われたそうです。“あなたは悪くない。だんなさんが悪い”“結婚指輪を質屋に入れたら生活保護を受けやすい”」

 その後、妻は相談人に紹介された保護施設へ入所した。入ってみると携帯電話を預けさせられたり、この場所を口外しないよう誓約書を書かされたりした。職員は子どもらに「お父さんは怖い人」と繰り返し言ったり、妻には「別れた方がいい」と言ったりしたという。

「そのころから妻は“なんだかおかしい”と思うようになったそうです。夫から暴力を受けたと言ってもいないのに『DV被害者女性』と見なされ、扱われていることに気がついたからです。あるとき、保護命令申立書の下書きを書くように言われました。その際、“ご主人が優しかったことは書かず、嫌だったことを誇張して書いたほうが有利になる”という助言もあったそうです。また、施設が紹介してきた弁護士は“裁判をしたら勝てる”と強く離婚を勧めてきたそうです」

 しかし奥さん自身、離婚もDV被害者として扱われることも望まず、その後、子どもとともに夫の元に帰った。流れに任せていれば、家族は望まぬ形で崩壊したままということになる。

 いかがだろうか?

 事例を見ればわかるように、こうした虚偽DVは、夫婦仲が悪くなれば、誰にでも起こりうる問題だ。

 前出の森弁護士は言う。

「本当のDVと虚偽のDVが混在しているのが実情です。子と親の関係が切断されてしまうわけですから、周囲はじっくり審議した方がいい。しかし司法関係者の数に比べ案件が多すぎます。本物のDV被害者を救うためには緊急性が求められます。それ故、ある程度の虚偽DVがどうしても発生してしまうのです」

「犬も食わない」夫婦喧嘩に法の手が入って15年。今後も法の規制強化は続いていく見通しだ。世の男性にとっては、誠に生き辛い世の中になったものである。

西牟田靖(にしむた・やすし)
1970年、大阪生まれ。コンピュータ会社に勤務後、ライターとなる。豊富な海外旅行経験を基に、アフガニスタンや空爆直後のユーゴなどでの取材を敢行。著書に『僕の見た「大日本帝国」』『本で床は抜けるのか』など。

週刊新潮 2015年9月24日菊咲月増大号掲載

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