「DV防止法」成立15年で急増した「冤罪DV」実態報告――西牟田靖(ノンフィクション作家)

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■カフェオレを無断で飲むと…

 こうした「でっちあげ」の最たるものと言えるのが、以下に紹介する事例である。

〈妻がスーパーで買ってきた総菜を「うまい」と言って食べた〉
〈妻に無断で、冷蔵庫のカフェオレを飲んでしまった〉
〈運転に集中するために、妻に話しかけられてもハンドルを握っている間は返答をしなかった〉

 胸に手を当てれば、誰にでも思い当たりそうな出来事。一言謝れば済む話であるし、最後の例などはむしろ問題なのは妻の方だが、これらが大真面目にDVと主張されているのである。

 これらは「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク(親子ネット)」という団体が作成した、約30ページに及ぶレポートから抜粋したものだ。同団体は、配偶者と別居や離婚後、子どもと自由な面会がかなわなくなった当事者たちが結成。その会員にアンケートを取ると、先のような事例が出てきたのである。

 レポートをめくれば、

〈帰宅して「ただいま」を言わずに、風呂に入り、酒を飲み、寝た〉
〈妻が洗濯物を床に置いたので怒った〉
〈車での送迎を頼まれたが、仕事中だったので断った〉

 などなど、これがDVかと、首をひねらざるをえない例が山積みだが、

「離婚して子どもをとるというゴールに向かい、使えそうな事実を機械的に当てはめ事実関係を組み立てていく。その中でこうしたDVとはいえないものも利用される、というわけです」

 先の宗像氏はそう話す。

 成立当初、法律が定めていた「DV」は、殴る、蹴るといったいわゆる身体的暴力だった。ところが、法律は改正を重ねられ、04年には「精神的暴力」もDVに加えられた。これによって「大声でどなる」「何を言っても無視して口をきかない」「誰のおかげで生活できているんだなどと言う」といった、夫婦喧嘩のひとコマと区別のつかないような事例や、「見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌を見せる」「いやがっているのに性行為を強要する」など、夫婦の“秘め事”である夜の営みまでもが、何でもありで「DV」と訴えられる可能性が出てきたのだ。

 内閣府のデータによれば、02年度に婦人相談所などに寄せられたDVの相談件数は、約3万6000件。それが13年度は、約10万件と3倍近くに跳ね上がっている。警察への相談件数に至っては、01年の約3600件に対し、13年は約5万件と、14倍近い増加ぶりだ。まさか、10年余りで世の男性が10倍以上暴力的になったわけではないだろう。夫に不満を持てば、何はともあれ、まず「DV相談」という傾向が強まっていることは、数字にも明らかなのである。

 むろん、こうした「でっちあげ」は、素人だけの知恵では難しい。法手続きを知った弁護士も、虚偽と知りつつ、それを手助けしている現状がある。

 新聞記者であるCさん(40代)のケース。

「妻が“こんな家にはいられません。離婚します”と言って1人で飛び出していきました。翌日、無理矢理2歳半の娘を連れ去ってしまいました。6年前の10月のことです」

 Cさんの妻は「コーヒーカップを投げつけられたり、太ももを蹴飛ばされたりした」と離婚調停の場で主張した。そしてその調停が不調に終わると、今度は離婚訴訟を起こしてきた。裁判で妻側は、写真と診断書を証拠に出しDVを主張。しかしCさんは首をかしげた。診断書や証拠写真に不自然な点が多々見られたからだ。妻が診察を受けた病院はなぜか妻の弁護士事務所の近く。撮影場所を自宅だと主張するも背景に配管やタンクが写りこんでいて自宅でないことが明らかだった。それらを裁判で指摘すると、妻側の説明は二転三転した。

「その結果、妻の主張するDVが虚偽だということが裁判で確定したんです」

 しかし、妻側の虚偽主張は続いた。

「判決後、妻の弁護士との直接交渉がこじれ、懲戒請求をかけたんです。その過程で先方から出てきた文書には、DV被害が10項目ほど挙げてありまして、『ペットをいじめる』というものもあった。うちは何も飼ってなかったので不審に思い、ネットで検索してみると、被害者支援サイトに一字一句そのままの文章がありました。コピペで作成したんでしょう」

 弁護士にとっても、DVは美味しい商売のタネ。離婚交渉において、夫の非道を訴えるには最もわかりやすい手段だし、反証されにくく、裁判所にも受け入れられやすい。訴訟を勝利に導くための「伝家の宝刀」とも言えるのである。

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