キラキラネーム問題は大昔からあった 「藤原明子」を読めますか?

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

■広がるキラキラネーム

「光宙」と書いて「ぴかちゅう」。
「苺苺苺」と書いて「まりなる」。
「愛夜姫」と書いて「あげは」。

「キラキラネーム」や「DQNネーム」がネット上での話題になって久しい。「DQNネーム」をまとめたサイトも作られ、登録されている件数は約2万5000件にも上る。

 その中にはいささか実在が怪しいものもあるのだが、何にせよ「太郎」「花子」のような誰でもすぐに読める名前が減ってきているのは事実だろう。

 明治安田生命が発表した「子供の名前(表記)ランキング2012」で、男子の3位は「大翔(ひろと)」、女子の7位は「心愛(ここあ)」である。

 こうした現象を見て、

「イマドキの親は子供の名前を何と考えているのか。名前は名刺代わりなんだから、もっと読み易い名前にしないと、子供が気の毒だ」

 と怒るのは簡単だ。

 しかし、実際にこれは「イマドキ」に限った現象なのか。

キラキラネームの大研究』の著者、伊東ひとみさんは、実はこうした難読問題はかなり昔からあった、と指摘している。

■「藤原明子」を読めますか

 たとえば、平安時代前期の第55代天皇である文徳天皇の女御であった「藤原明子」。

 この名前を読める人がどれだけいるだろうか。

 答えは「ふじわらのあきらけいこ」である。

 以前は「ふじわらのめいし」とされていたが、近年、読み方を記した文献が発見されて正確な読み方が判明したのだという。

 似たような路線では、この藤原明子の息子、清和天皇の妃になった「藤原高子」も「ふじわらのたかいこ」と読むのが正解である。

■「和子」もキラキラだった?

 漢字の読み方にはかなりの幅があり、また「個性的な名前を」と思う親はいつの時代もいるようで、江戸時代にも今と同じような難読の名前ブームが起きたこともある。それを嘆いていたのは、かの大学者、本居宣長である。宣長は、随筆の中で、次のように書いている。

「最近の人の名前には、名前にふさわしくない字を使うことが多い。(略)

 最近の名前はことに奇妙な字、変な読み方をして、非常に読みづらい名前を多く見かける。すべての名前は、いかにも読みやすい文字で訓がよく知られているものがよい」(訳は伊東さん)

 まさに今のキラキラネームに対しての苦言とまったく同じなのである。

 宣長は様々な名前について疑問を呈しているのだが、意外なのは「和子(かずこ)」という名前を問題視している点だ。

「もともと『和』の訓読みは『なご(む)』『やわ(らぐ)』などで、『かず』という読み方は通常の音訓ではありません。『かず』は人名だけで使われてきた読み方です」(伊東さん)

 たしかに言われてみれば、名前以外で「和」を「かず」と読むケースは思い当たらない。そのため、宣長は「和子」はダメ、と思ったようで、

「人の名に『和』の字を用いて『かず』と読むのは間違いである」

と書き残している。

古今数多のキラキラネームを研究し、本書を執筆するうちに、伊東さんがたどり着いた結論は、「これは日本語の本質と結びついた問題だ」ということだったという。

デイリー新潮編集部

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。