天皇陛下から“お小遣い”「若き学究」18人

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「巨大隕石」「変体漢文」「金属ナノ粒子」。異なる分野の若き学究18人が、天皇陛下から“お小遣い”を賜った。

 3月4日、東京・上野の日本学士院会館で行われた「第5回育志賞」授賞式。

 主催者である日本学術振興会によれば、

「陛下のご即位20年で御下賜金を賜り、2010年に創設されました」

 国立、私学問わず大学院博士課程に属する34歳未満の学生で、学長や学会長の推薦を受けた者が選考委員会に諮られる仕組みだ。

「今年度は、157名の候補者の中から、18名が受賞者として選ばれました」(同)

 奨励金l10万円を賜った秀英たちの代表として、九州大学理学府の佐藤峰南(ほなみ)さん(26)が天皇皇后両陛下に謝辞を述べた。彼女は、2億年前に巨大隕石の衝突が起こった証拠を初めて発見した功績が評価された。

 他にも「野生動物との軋轢緩和」、「霊長類の苦味受容体遺伝子」の研究など百花繚乱。音楽研究者として初の受賞となった東京藝術大学音楽研究科の上田泰史さん(30)は語る。

「式典後の茶会では、両陛下と30分だけお話しする場が設けられました。皇后陛下は係の方に“あと5分です”と声をかけられても、“まだ、みんなの話を聞いていません”と制し、延長して耳を傾けていました」

 上田さんの研究テーマは、「1850年代から80年代のパリ国立音楽院におけるピアノ教育――レパートリー規範の成立過程とその諸要因」。ショパンなど現代で誰もが知る作曲家が、いかに価値を与えられてきたかを探る試み。ピアノを嗜む美智子さまとの話も弾んだ。

「音楽院を、“コンセルヴァトワールのことですね”と仰ったり、19世紀の話に及ぶと、“あの頃はオペラが盛んでしたものね”と、音楽に造詣が深いご様子でした」

 と、上田さんは感激の面持ち。現在パリで研究中の彼は、将来、日本に戻って教員となり、音楽と社会の橋渡し役になりたいという。

週刊新潮 2015年3月19日号掲載

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