“丁半博打”みたいな「バイナリーオプション」の問題点

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 2万円を3日間で100万円に!?――インターネットには、こんな風に個人投資家を募るサイトが溢れている。円とドルの為替レートを利用し、ある時点で円高になるか、円安になるかを予想する「バイナリーオプション」取引だ。

 バイナリーオプションを訳せば、「二者択一」という意味。これにお金を投資するわけだから、まさに丁半博打のような取引である。

 種々の問題点を指摘する前に、さるネット証券に口座を開設し、実際にこの取引をやってみた。

 1月12日午前9時51分。午前11時の円ドルレートが、118円30銭より円高になるか、円安になるかを予想する取引に参加。円安になると思い、当たった場合、1口1000円の受渡金(ペイアウト)がある権利を597円で2口分(1194円)購入した。

 この権利の金額は為替によって刻々と変動し、当たる可能性が高くなれば、1000円に近くなり、当たらないとなれば、数十円台まで下がることもある。

 つまり確実に当たりそうなポジションでお金を張っても、ほとんど旨みはなく、逆に全く当たりそうにないポジションで一獲千金を夢見ても、当たる可能性は極めて低いのが現実だ。

 さて、11時には予想通り118円30銭よりも若干円安になった。1194円を投じて、2000円の収入を得たから、差し引き806円の儲けである。

 次は午後1時に118円40銭より円安か円高かを予想する取引に参加。円安に振れると判断して、11時5分に2口分を1096円で買った。今度は円安にはならず、購入金額がそのまま損失になった。

■返金を引き延ばされ

 昨年の夏、国民生活センターにバイナリーオプション取引に関する相談が多数寄せられた。特に8月は340件にも達している。

〈簡単に誰でももうかる〉

〈100万円ぐらいなら稼ぎ方教えます〉

 そんなネットの書き込みを信じた人たちが誘導されたのは、金融商品取引法の網をのがれた無登録の海外のバイナリーオプション業者のサイトだった。

「ネットで、儲かったとコメントしている人の半分以上はサクラだと思います」

 と語るのは金融取引事案に詳しい福村武雄弁護士。

「すごく勝ったからお金を引き出そうとしても、なかなか返金に応じてくれない。なにがしかの手続きが必要と言われて、返金を引き延ばされているうち、いつの間にかサイトが消えている。ネットの話を鵜呑みにしてバイナリーオプションを始める人は、投資で損するのではなくて、入金段階で詐欺に引っかかっている可能性が珍しくありません」

 監督官庁の金融庁証券課によれば、

「日本で外為のバイナリーオプションが始まったのは2009年。現在、金融庁に登録している業者は国内5社、海外2社。無登録で日本の投資家を勧誘している業者には警告書を送り、金融庁のホームページで業者名を公表しています」

 昨年末までに警告書が送られた無登録のバイナリーオプション業者は38社あるそうだ。

 先の福村弁護士は、

「バイナリーオプションは長期的な投資の展望とは無関係で、刹那的な判断を求められる。次に振るサイコロが丁か半か。原理は丁半博打と全く同じだと理解しております」

 と本質を解説したうえで、こう警鐘を鳴らす。

「取引を続ければ、確率は50%に近くなるはず。十数戦やって一度も当たらないのは、かなり運が悪いか、見立てが悪いということになりますが、プログラムが操作され、客が絶対に勝てない仕組みになっている業者もあるようで、こうなると博打ですらありません。単なる詐欺ですね」

 うまい儲け話には、危険な落とし穴があるようだ。

週刊新潮 2015年1月22日号掲載

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