営業部はなぜバカにされるのか? 汗臭い・押しが強い・接待費使い過ぎ……

仕事術

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 学生の希望職種としても、また社内の異動希望先としても、営業部はあまり人気がない。いや、企業によっては営業部をバカにする風潮すらあるらしい。本来、企業の中心であるべき部署なのに、なぜそんなことになるのか。リクルートやソフトバンクテレコム等で、営業のエキスパートとして辣腕をふるった北澤孝太郎さん(現・フライシュマン・ヒラード・ジャパン社バイスプレジデント)は、『営業部はバカなのか』でその理由を解き明かしている。以下、同書から抜粋してみよう。

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■バッド・イメージの理由

 たとえばこんな調子の会話が社内で聞こえてきませんか。

「うちの営業は、全然働かないよね」

「そうそう、お酒ばっかり飲んでいるのに、まるで全社を支えているような大きな顔をするのよ。嫌よね」

「売上がどんどん下がって来ているのに接待費はどんどん多くなってるでしょ。このままじゃ私達のボーナスも減らされるかもね」

「私のところに、この間から、同じ店の伝票ばっかり回ってきて、しかも金額が半端じゃないのよ」

「それって、社内の飲み会にも使っているんじゃないの?」

「この間なんかさ、客先の人数が一名なのに、手土産が三つも付いていたの」

「あの部長、きっと自分の家に持って帰っているのよ」

「あと、何か妙に押しが強いのもうっとうしいよね」

「そうそう、何でもグイグイ来るっていうか。しかも汗臭い(笑)。夏場は近くに来て欲しくない」

「大体、いまだに体力勝負みたいな営業やっているからダメなんだって、うちの部長は言ってたわよ」

「それ、うちでも聞いた。うちの営業部ってバブル前と同じやり方しかやっていないって」

 ずいぶん辛辣な会話ですが、これは、ある会社の女性たちの井戸端会議です。

 みなさんの会社の営業部は大丈夫ですか。社内でこんな風に見られていませんか。つまり「偉そう」「無駄な接待をやっている」「古い」というようなバッド・イメージを持たれていないか、ということです。

 営業とは、もともと「業」を「営む」と書き、企業活動そのものを言います。にもかかわらず、どうしてバッドなイメージで捉えられがちなのでしょうか。

■他部署からの蔑視

 営業部への評判(もしくは悪評)には、どのようなものがあるのでしょうか。冒頭の会話を分析すると、次のようなものに分類できるように思えます。

【1】何となく押しが強くて嫌な感じ。本心が見えない。
【2】体力勝負というか、汗臭いというか、うっとうしい。
【3】やたらと接待と称して酒ばかり飲んでいる。仕事でなくても酒を飲んでいる。
【4】社内の決まりごと(精算など)をきちんとやらない。それで平気な顔をしている。
【5】古いやり方から脱却できない。頭が固い。
【6】他部署から「古い」などと指摘されることを嫌がる。「営業部のことは他部署にはわからない」という唯我独尊的な態度に出る。

 それぞれについてその理由を考えてみましょう。まず、【1】と【2】について。

 セールスを、少しでも創造的(クリエイティブ)にやろうと思うと、人情の機微に触れるような駆引きの巧みさを追求することに価値を見出しがちです。

 これは決して責められる筋合いのことではないのですが、社内の第三者から見た場合に「駆引きが上手い」というのは必ずしも良いイメージにはつながりません。頼りになるといえばなる、しかし油断できないというようにも受け止められるからです。

 一方で、営業部には常に結果へのプレッシャーが押し寄せてきます。その結果を得るためには、ある程度の数をこなさなくてはならなくなります。

 ドブ板営業を頑張るということは、他人につけこむ「巧みさ」を身につけ、朝から晩まで働いて「膨大な仕事量」をこなすということです。その「巧みさ」は、「汚さ」を連想させ、「膨大な仕事量」は「汗」を連想させます。

 そこに、他の人たちからの蔑視が、輪をかけます。人は、自分が明らかにできないこと、理解不能なことに直面すると、過剰な賞賛をするか、蔑視するかのどちらかに振れるという傾向があります。多くの場合、他部署は営業部を蔑視する傾向があります。これは私自身の経験や、またかかわった様々な会社からも断言できます。

 一方で、蔑視される方は、自分の存在を示すために自分の強みを益々強化させようとします。俺たちは、人のやらないことをやるすごい奴らなのだということを示したくなります。その結果、駆引きをエスカレートさせ、接待や冠婚葬祭を含めた直接商活動でない訪社活動を活発化させます。もちろん、それが、商談成立の決め手となることもありますが、いまどきそれだけで業績は上がりません。しかし、それが営業部の伝統だということで恒常化してしまうのです。これが【3】につながります。

 このような効果の見えない「伝統」が恒常化するということは、コストを増大させることにつながります。客観的に見てそれがわかっているから、冒頭の会話のように営業部の接待を疑問視する声が社内から上がるのです。

 こうして他部門からは理解されず、蔑視傾向のみが強化されていきます。営業部へのバッド・イメージは強化されていくのです。

■「営業はバカ」のイメージはなぜ?

 業務での接待を除いても、営業部には酒席が好きな人が多いようです。これには理由があります。先ほど触れたドブ板営業は心理的にも体力的にも疲れるものです。だからこそ、目標を達成すると、「お祝いだお祝いだ」と周囲を巻き込んで自分にご褒美とばかりに飲みに行きます。達成できないうえ、社内で軽蔑の眼差しで見られたりすると、愚痴を言いたくなるので、この場合も結局飲みに行きます。

 営業マンがなんとなく、居酒屋や赤提灯に飲みに行く回数が多くなるのは、私自身の経験上よくわかります。

 人の気持にも鈍感になっていきます。目の前の仕事に集中すればするほど、他のことが見えにくくなり、どうでもよくなってきます。まず、仕事と距離の遠い家庭のことがどうでもよくなります。その次が社内の営業成績とは関係のない部署です。

 これが【4】につながります。社内の他部署との関係をついつい軽視してしまうのです。

 他の部門からいろんな要望があっても、その要望に応じた動きができず、深く考えて答えを返すことができません。精算などをきちんとしないというのは、その典型です。

 この傾向が強まると、今度は営業先に対しての態度も悪くなります。客に対して反射的に感謝の言葉やお礼の言葉はでるのですが、それもだんだん受注行為に対する反応だけになり、そのプロセスで起こるいろいろなことを気に留められなくなります。逆にちょっとしたことで怒ったり、いらついたり、人に直言したり、頭ごなしに言ったりするようになります。本当に全てにおいて、心に余裕がなくなっていくのです。

 人は、ギリギリまで頑張ると、こんな風になります。燃え尽き症候群とでもいうのでしょうか。燃え尽きた状態は、新しいことを勉強する意欲を確実に削ぎます。この無気力感がマンネリ化するころに、また目の前の数字が気になり出します。そして、なんの武器(新しい知識)も獲得しないまま、同じ手法(成功体験の繰り返し)で、目の前の目標を達成することに全力を注ぎ出します。そして、それをまた達成すると、今まで以上の無気力感に襲われる。要するに勉強しないサイクルがどんどん習慣化するのです。

 これが【5】の原因です。つまり「旧態依然とした仕事」から脱却できなくなるのです。

 それでも社内的な面目を保つためには、どうするか。

 営業というものをブラックボックスにするか、部分的な成功体験をいかにも全体にも大切なこととして話すしか無くなります。これが【6】につながります。

 しかし、そんな話に納得する他部署はありません。業績を伸ばしていない限りは、ただの独りよがりです。よって「うちの営業は変われない。同じことをやり続けるバカだ」と捉えられるようになってしまいます。

 【1】から【6】までが揃うと、「営業部はバカ」というイメージがますます社内で定着していきます。営業部員たちは、必死にやっているのに、「汚い」「バカ」と思われる。

 すると、そのイメージがまた彼らを孤立させ、結果としてその傾向を強めてしまう。悪循環です。これは、本当にもったいないことです。

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 ではこの「もったいない」悪循環から抜け出すにはどうすればいいか。営業部を孤立させないためには、どんな手があるのか。『営業部はバカなのか』で、著者はその具体的な解決策を示している。

デイリー新潮編集部