実力派の人気芸人が犯した致命的ミス 「個人でライブ」で契約終了 処分が「妥当」だったワケ

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金銭の問題や事故への対応も

 また、ライブには金銭の問題も絡んでくる。観客からチケット代を受け取り、共演者に出演料を支払い、会場の使用料などの経費を精算する。

 所属芸人が個人で有料ライブを主催する場合、そこから生じる収益を誰が管理するのか、事務所にどのように報告するのかという問題が発生する。所属タレントの仕事から生じた売り上げを事務所が把握できないという状況は、マネジメントを行う会社として容認しがたいものである。

 さらに、興行を開催すれば、観客とのトラブルや出演者間の問題、事故などが発生する可能性もある。たとえ芸人が個人で主催したライブであっても、何か問題が起これば、所属事務所にも説明や対応が求められることがある。

 会社の知らないところで所属芸人が仕事を行い、問題が発生したときだけ会社が責任を問われるのでは、マネジメントという事業そのものが成り立たない。そのようなリスクを管理するためにも、所属芸人が会社の了承を得て仕事をするというルールには合理性がある。

 今回の契約終了は、芸人の自由な活動を事務所が理不尽に妨げたというような形で解釈するべきではない。芸人が自由に活動したいと考えるのは当然だが、その活動はあくまでも事務所との契約を前提にしたものでなければならない。

 吉本興業は多くの芸人を抱え、自社の劇場を運営し、さまざまな取引先と関係を築いている。その事業を維持するためには、所属芸人が独断で活動することを無制限に認めるわけにはいかない。

 ヤスの契約内容や契約終了に至るまでの経緯がすべて明らかになっているわけではないが、仮に会社の了承を得ずに独自の興行を行っていたのであれば、吉本興業がそれを重大な問題と捉え、契約を終了するという判断を下したことは妥当であると考えられる。

 タレントとしての才能や実力がどれほど優れていても、事務所との取り決めを軽視し、独断で行動するようでは、信頼を維持することはできないのである。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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