海外のUberタクシーとは似て非なるもの…「日本版ライドシェア」が全く普及しない理由
観光地などでの深刻なタクシー不足を理由に「日本版ライドシェア構想」が脚光を浴びたのは菅義偉元首相が2023年8月に強い意欲を示したのがきっかけだった。その翌年4月に岸田文雄政権下で「タクシー会社の運行管理下で一般ドライバーを活用する」という形で実現に至った。しかし、外国人観光客の数は増える一方なのに、ライドシェアは一向に普及する気配が見えない。
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ドライバーが集まらない悪条件
海外で普及しているライドシェアは一般ドライバーが隙間時間に自分の車で乗客を乗せて運ぶというものだが、日本版はまったく違う。客を奪われる心配があるタクシー会社の反対と安全面の理由から、タクシー事業者が運行管理するという限定的な導入にとどまるいびつな形となった。つまり、ライドシェアタクシーが運行できるのは、タクシー不足が認定された地域のみで、しかも限られた時間帯だけしか稼働できないのである。いつでもどこでも自分の車で好きな時間に稼げる米国のUberのような仕組みにはならなかった。さらに米国ではあくまで個人事業主だが、日本ではタクシー会社の支配下だ。
そのためドライバーにとってのメリットは少なくなり、運転手は期待通りには集まらなかった。道路交通の問題に詳しい自動車ジャーナリストの高根英幸氏が言う。
「実は私も日本版ライドシェア導入時に興味があって、求人内容などを調べてみました。すると、あまりにも条件が悪いので驚きました。タクシー会社の都合しか考えていない、労働搾取でしかない印象でした」
事実、ドライバーが集まらず、目標の認可台数に達しない地域が続出した。仮にドライバーになっても、タクシー会社の管理下にあるため、売り上げの半分程度が会社側に取られてしまううえ、1日9時間以上の休息義務などの労働制約があるため、ドライバーは収入の面でも満足できるものにはならなかった。車と燃料代は自前でも運賃すべてが手に入る海外のライドシェアのような“うま味”がなかったのだ。
客にも不評で「三方悪し」
利用者サイドから見てもうま味はなかった。日本版ライドシェア構想が持ち上がったころは「普通のタクシーより安く乗れるならありがたい」と歓迎ムードがあったが、実際はタクシー会社の管理下に入ったことで、料金面でのメリットもなくなった。
導入直後にドライバーとして働いたことがあるというフリーカメラマンはこんな体験をした。
「運転は得意だし、アルバイト感覚で応募したんです。でも運行できるのは平日だと午前中だけ。儲かる深夜帯は走れません。1日の手取りが1万円なんてありえないくらい儲かりません。いちばん落ち込むのは、せっかくお客さんを見つけても、ライドシェアの車には乗りたくないと言われることが多かったこと。“走り損”って感じだったので、2週間ほどで辞めました」
同じ料金なら信用できる正規のドライバーの車に乗りたいというのが客の真情だろう。
こうして、タクシー会社にとっても、ドライバーにとっても、客にとってもありがたくない「三方悪し」のサービスは普及しなかった。結果的に、タクシー不足はいまだ解消されていない。
「タクシー会社はドライバー不足や高齢化への対策として、昼だけ、夜だけといった働き方などの提案で若手ドライバーが集まり始めています。その一方でライドシェアも募集を続けていますが、なかなか集まりません。やはり最初の印象が悪かったのが影響しているのでしょう」(高根氏)
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